本研究の目的はミクロレベル(企業レベル)の会計情報を集約(aggregate)して作成したマクロレベル(集約レベル)の会計情報を用いて、マクロ経済指標 (GDP、個人消費、企業の設備投資)の将来予測を実証的に行うことにある。マクロレベルの会計情報としては、四半期毎に報告される全上場企業の営業利益総 額、当期純利益総額あるいはその変化分、ROA(それを分解した売上高営業利益率、総資産回転率)などが、その代表的な尺度である。 本年度の最大の研究実績としては、研究期間全体の最終成果として出版した書籍を挙げることができる。これまでの研究成果を総括することを目的として東北大学准教授・吉永裕登氏との共著で日経BP社/日本経済出版から『マクロ実証会計研究』を出版することができた。マクロ実証会計だけを扱うものとしては、わが国では初めての書籍であるため、導入的な内容から始まり、次のような内容を扱った。第1に「マクロ経済予測における会計情報の有用性」、第2に「集約利益と将来GDP成長率との関係の源泉」、第3に「業績格差の特徴とその経済予測への活用」、第4に「マクロ実証会計研究の展望」である。マクロ実証会計研究への招待、具体的な計測尺度の解説、先行研究の整理、わが国における集約利益の計測、実際の計量分析まで包括的に扱うことができた。 追加的な研究実績としては、グローバル・データを用いた国際比較分析も完成することができた。この研究は既に論文としてまとめ、国際ジャーナルに投稿済みである。現在はレフリーから2度コメントを受領して、第3ラウンドに進んでいる。
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