研究課題/領域番号 |
17K04045
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大森 明 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (00340141)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水会計 / 国立公園 / 水資源 / 生物多様性 / 管理 |
研究実績の概要 |
水循環のマネジメントに資する会計モデルの研究の第4年度に該当する。第4年度においては、第3年度において行った研究、すなわち、水循環の源となる山間部の水源域の円滑な管理を目的とする水会計モデルの模索であり、具体的には国立公園の適切な管理に資する会計モデルの検討を踏まえて、モデルの具体化を図った。 具体的な会計モデルとしては、第3年度において検討対象とした尾瀬国立公園の管理において、自然資本連合(Natural Capital Coalition: NCC)が2016年に公表した『自然資本プロトコル』(NCP)にもとづいて、各管理主体における自然資本保全に向けた努力をコストと物量の両面から捉えるフレームワークを提案したが、第4年度においては、尾瀬国立公園だけでなく普遍的な展開可能性を考え、北海道における国立公園での適用可能性を検討した。北海道は、過酷な自然環境下に国立公園が存在するためにその管理の困難が顕著であること、また、生物多様性の毀損が著しいという自然資本の保全という観点から、検討対象として適格と考えた。 第3年度に提示した会計フレームワークは、インプット、アウトプットおよびアウトカムという3種類の状況について、尾瀬ヶ原の各ゾーンごと、管理主体別にコスト情報を上記の自然資本と人工資産の分類別に情報を収集し、最終的に、どのゾーンにおいて誰がどのような活動を実施し、その結果どのような環境の状態になっているかを把握できる仕組みとなっていた。第4年度では、こうした自然資本会計情報を集約するだけでなく、国立公園を核として展開するステークホルダー群から成る地域全体を会計実態とすることを強調させ、地域のメソまたはマクロ会計情報とのリンクを理論面から検討した。こうしたことにより、国立公園の管理に関わる組織をネットワーク型組織として捉えて効率的・効果的な管理に役立てられることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、2方向の水会計モデルの提案を行う予定であったが、ダムなどの水資源関連施設のマネジメントに資する会計モデルの提案が、昨年度に引き続き遅れている。その理由は、コロナ禍により現地調査ができないという点が大きい。また、学内業務の多忙という点に加え、介護というプライベートな理由による点も大きい。
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今後の研究の推進方策 |
国立公園の管理に資する会計モデルについては、現地調査での適用可能性の検証を経て、実装可能なモデルとして確立させたい。この会計モデルの考え方を、流域別の水資源管理に役立てることができるかを検証し、特定の河川水系に適用する上での課題を明らかにする。 また、第3年度から第4年度にかけて遂行したいと考えていたもう一つの水会計研究は、日本の水源確保のインフラとして大きな役割を担っているダムの維持管理に資する会計モデルの提案であった。コロナ禍という事情からダム立地地域への現地視察が遂行できず、研究が中断した状態となってしまったが、本研究では従来の先行研究のようにコスト面のみの試算にとどまらず、環境資源の保全という視点も会計モデルに組み込み、ダムの維持管理に関わる政策意思決定に資することを目的としているため、まずは既存研究の整理を行うとともに当該水会計モデルの精緻化に取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はコロナ禍のため,現地調査を行うことができなかったことにより研究成果がまとまらずに,学会発表や論文投稿を行うことができなかった。次年度には,当該年度にできなかったことを実施する予定である。
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