研究課題/領域番号 |
17K04046
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
大串 葉子 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 教授 (80325555)
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研究分担者 |
上總 康行 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 教授 (20121494)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 事業構造の変革 / 海外進出 / 事業計画 / 事後監査 / 投資経済計算 / 投資意思決定 / 事例 |
研究実績の概要 |
プロダクト・ライフサイクル論(Product Life Cycle)が示すように事業は永続的に持続可能ではないのだから,どこかの時点で事業構造の転換や主力製品の交代は必須であり、その必要性は企業規模を問わない。そして,その実現のための資源配分や製造プロセス変更の過程などにおいて,会計情報が多用されていると考えられる。しかしながら,企業内部における機密情報も多分に含まれているために,その利用の実際は明らかにされてこなかった。そこで、2018年度は、主力製品変更実現のために,事例企業が会計情報をどのように利用したのかについて、アーカイブデータと財務データをもとに半構造分析を行った。主力製品の変更には、①製品そのものの変更、②製造拠点の変更、③販売場所の変更の3つがあるが、2018年では①を明らかにした。その結果、会計データは経営管理や投資意思決定のためのみならず、従業員の技術習得や若年層への技術教育へのインセンティブとして効果的に利用されたことで技術習得期間が大幅に短縮され、主力製品の変更に大きく貢献したことが明らかになった。 研究実績としては、まず、中小企業会計学会の課題委員会において、これまでの研究成果を「事業変革時の管理会計の役立ちとその意思決定を実現するための人材育成への活用」という内容で報告した。さらに、主力製品の変更を事業変革としてとらえ、『中小企業管理会計の理論と実践』の第12章「中小企業の主力製品変更における管理会計の活用」(水野一郎編著、中央経済社、2019)として上梓した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に予定していた海外子会社への実地調査は遅れているが、これまでの文献研究の収集・精読とリサーチサイトへの5回に渡る調査訪問(本社:聞き取り調査対象は代表取締役社長と専務)を行っており、これらをまとめたうえでリサーチデザインの修正を図っているところである。 さらに、投資経済計算の世界的な権威であるデリル・ノースコット教授(オークランド工業大学:ニュージーランド)と面談し、研究やその成果についてアドバイスをもらうことになっており、研究内容や成果についてよりよいものにするための算段を整えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果と入手したデータをもとに分析を行い、リサーチデザインを修正した後、本年8月までに海外子会社と本社への調査を終えて国内外で学会報告を行う。現在までの進捗状況の項目でも説明したように、投資経済計算の世界的な権威であるデリル・ノースコット教授(オークランド工業大学:ニュージーランド)と面談し、研究やその成果についてアドバイスをもらうことになっており、研究成果をよりよいものにしていくと同時に、海外でも学会報告を行うことによって新たなリサーチサイトや海外の研究協力者を得ることで、海外企業の海外進出の際の調査も可能になるようにしたいと考えている。 最終的には国内外の学会誌へ投稿し、次の研究段階である実証を行うための準備体制を整えることにしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の主担当者の異動でリサーチサイトと距離が離れてしまったため、一時的に密なコミュニケーションが取りづらくなり、海外子会社への調査日程の調整に時間がかかってしまった。2019年5月20日現在、すでに5月から9月で集中的に海外子会社へのヒアリングを行うことで日程の調整が済んでいる。併せて、海外の研究者との協議や、海外の学会での報告も行う予定である。
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