研究課題/領域番号 |
17K04048
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小沢 浩 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (40303581)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 原価企画 / 原価見積 / マツダ / パラメータ設計 |
研究実績の概要 |
2018年度には、これまでの研究成果をまとめて、第44回日本原価計算研究学会全国大会(8月31日(金)@早稲田大学)で、報告論題「原価の見積りエラーを生じさせる2つの原因」として発表した。また、『原価計算研究』に論文「原価見積の失敗の原因と原価企画の2段階モデル」を投稿し、受理された。 現在までに得られた知見は、次の通りである。まず、原価企画が成功するためには、開発・設計中の製品の原価を正確に見積もることができなければならない。しかしながら、原価の見積に失敗し、実際の原価が見積を上回ってしまうケースが存在する。見積に失敗する原因は、2つ考えられる。1つは、原価の発生態様が線形であることを仮定してしまうことである。経験したことのある範囲内では線形の仮定が許容されても、未経験の分野では、線形が成り立たないことがある。もう1つは、品質に影響を及ぼす因子どうしの交互作用の存在である。特定の因子を僅かに変化させることが、全体の品質に大きな影響を及ぼしてしまい、その修正に時間やコストがかかってしまうことがある。 論文では、さらに、株式会社マツダにおける自動車の設計を例として取り上げて、原価企画の2段階モデルを提示した。第1段階は、コモディティごとに特定の因子に対して頑健な品質の設計をしておく段階である。第2段階は、頑健な品質のコモデティを組み合わせて目標とする収益を実現しようとする段階である。また、原価低減のためには、部品の共通化が効果的であると言われるが、本研究では、第1段階において、部品を物理的に共通化をしなくても、パラメータ群を共通化しておけばよいという、新しい共通化のあり方を示した。また、品質とコストの「同時的」達成と言われてきた原価企画において、同時ではなく、段階的に達成するステップがあり得ることを示した。これら2点が、原価企画研究における貢献であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、明らかにしようとしていた研究課題は、原価企画において目標原価を達成するための思考プロセスを明らかにすることであった。これまでのところ、その目標は達成できていないが、エラーを起こす思考プロセスを明らかにすることができた。全体の一部ではあるが、着実な成果を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、原価企画において、目標原価を達成するための思考プロセスを明らかにする。次の課題は、品質や原価を決定する複数の因子がトレードオフの関係にあり、与えられた前提条件のもとでは、目標とする設計解にたどり着けない状況において、設計担当者がどのような思考方法で解を導こうとするのかを明らかにすることである。すでに提唱されている「トレードオフ曲線」や「セットベース製品開発」の考え方をベースにして考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度から繰り越した金額を、2018年度に使用したため、2018年度に改めて未使用額が生じた。また、使途の制限のない他の予算を、科研費と組み合わせて使用したために、科研費の使用額を節約することができた。未使用額については、2019年度において、主に、情報収集のための旅費等として使用する計画である。
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