研究課題/領域番号 |
17K04051
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
草野 真樹 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (50351440)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 会計学 / 負債 / 認識対開示 / ストック重視の会計 / リース取引 / 負債コスト / 監査報酬 / 監査コスト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,負債の認識拡大に関する理論的・実証的研究を行い,貸借対照表を重視する会計モデルの特性を明らかにすることである。平成30年度は,前年度に引き続き,ファイナンス・リース取引に焦点を当て,まず,負債の認識拡大が会計情報の有用性に及ぼす影響について実証分析を行った。企業会計基準第13号はすべてのファイナンス・リース取引を財務諸表本体で認識する原則処理を要求したが,当該会計基準適用前に契約を締結した所有権移転外ファイナンス・リース取引を注記で開示する例外処理も容認された。そこで,既存の所有権移転外ファイナンス・リース取引に関する会計方針の選択が負債コストに及ぼす影響を分析したところ,原則処理を選択する企業は,例外処理を選択する企業よりも負債コストが小さくなることが明らかとなった。この結果は,財務諸表本体での認識は,注記での開示よりも経営者と資本市場参加者との間の情報の非対称性を緩和するため,資本コストを引き下げる効果があることを示唆している。 次に,負債の認識拡大が監査人の行動に及ぼす影響について分析した。とりわけ,ファイナンス・リース取引の認識と開示の違いが監査報酬と監査コストに及ぼす影響について実証分析を行った。分析の結果,認識と開示の間で,ファイナンス・リース債務と監査報酬との関連性に差異があることが明らかとなったが,ファイナンス・リース債務と監査コストとの関連性に差異があるという結果は得られなかった。この結果は,ファイナンス・リース取引によって企業の財務リスクが増加し,監査人のビジネスリスクが増加したときに,監査人は,注記で開示されるファイナンス・リース取引よりも財務諸表本体で認識されるファイナンス・リース取引に対して,追加的な監査労力を費やすのではなく,リスクプレミアムを監査報酬に課すことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ,負債の認識拡大が会計情報の有用性などに及ぼす影響について実証分析を進め,着実に研究成果を公表していることから,「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も,当初の研究計画に従って,負債の認識拡大に関する理論的・実証的研究を進め,貸借対照表を重視する会計モデルの特性を明らかにする。
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