まず、決算発表直後のメディアによるニュース報道の特徴を調査した分析については、多くの企業が同時に決算発表をすると、メディアで報道される確率が低下し、たとえ報道されても報道までの経過時間が長くなり記事の量も少なくなることなどが明らかになり、その分析結果はアメリカ会計学会(2019年8月サンフランシスコ)の年次総会で報告した。さらに、決算短信が取引時間外または取引時間内に開示されたケースの株価反応を比較した分析については、特別気配という東京市場の独自のルールが決算短信の開示時間帯で有意に異なる株価反応のパターンを引き起こしたという結論を補強するため追加分析を行った。たとえば、企業は、決算短信をいつ開示するのか、そのタイミングを任意に選択できる。したがって、決算短信の開示時間帯で有意に異なる株価反応のパターンは取引時間外または取引時間内に開示することを選択した企業の諸特性が異なるからであるという可能性を排除するため、傾向スコアマッチングを用いた分析や両方の時間帯で決算短信を開示したことがある企業に限定した分析を行い、分析の結果が頑健であることを確認した。また、決算短信の開示時間帯で有意に異なる株価反応のパターンは決算発表直後のみならずその他の期間にも観察される現象であるという可能性を排除するため、決算短信の開示時刻を任意に変更した分析を行い、分析の結果が決算発表直後に特有の現象であることを確認した。その上で、ヨーロッパ会計学会(2020年5月ブカレスト)とアメリカ会計学会(2020年8月アトランタ)の年次総会で研究報告を行うべく、2019年11月と2020年1月に論文の投稿を行い、2つの学会事務局より研究報告を受理する旨の連絡を受け取っている。なお、前者の学会は新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催延期となっているが、いずれ研究報告を行う予定である。
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