研究課題/領域番号 |
17K04055
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中村 正伸 香川大学, 地域マネジメント研究科, 教授 (70757723)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 製品開発 / ITプロジェクト / アジャイル / マネジメント・コントロール・システム / 業績管理システム / 経営理念 / 顧客志向 / 信頼 |
研究実績の概要 |
製品開発では、製品戦略・製品開発戦略に基づく中長期的な開発計画の中に個別製品開発を位置付けてのイノベーションが求められるが、そのための予算管理を中心とするマネジメント・コントロールの役割は明確でない。そこで中長期的な開発計画に対応するものとしてプログラム(以下PG),個別製品開発に対応するものとしてプロジェクト(以下PJ)を位置付け、それぞれの内容と関係性を整理して予算管理システムを中心とするマネジメント・コントロール・システムのモデル構築を本研究の目的とした。 初年度の2017年度では、製品開発のイノベーション促進の必須要素として組織学習を位置づけ、その促進の為に、予算管理システム中心の財務的なコントロール・システムと、理念・事業境界システム中心の非財務的なコントロール・システムからなる、マネジメント・コントロール・システムのモデルを構築した。続く2018年度には、非財務的なコントロール・システムを詳細化する必要から、PJマネジメントのそもそもに立ち返り、活動(PJマネジメントにおけるWBS)とスケジュール・品質(PJマネジメントでのQCDのうちQとD)を非財務的な要素として位置づけ、財務的要素である予算(PJマネジメントでのQCDのうちC)とセットで、業績管理システムとして定義した。 2019年度は、経営学全般において、俊敏性を意味するアジリティ、アジャイルの概念が着目される中、PMI(PJマネジメントの知識体系でありグローバルスタンダードとなっているPMBOKの統括団体)の日本支部との共同研究により、ITシステム・サービス開発におけるアジャイルPJを念頭にマネジメント・モデルの構築に着手、インタビュー調査・文献調査等を通じ、業績管理システムに加え、メンバー間・職場への信頼や、現場への権限委譲、メンバー間での経営理念の共有、顧客志向の浸透が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は当初3か年を予定研究期間とし、1年目はモデル構築とアンケート調査項目確定、2年目はアンケート調査とインタビュー調査の実施と分析、3年目は総まとめと論文作成を予定していた。 1年目である2017年度においては、文献調査とリサーチサイトでのインタビュー調査に基づき、予算管理システムを中心に財務的なコントロール・システムと、予算管理システム以外の非財務的なコントロール・システムからなるマネジメント・コントロール・システムのモデルを仮説として構築した。 しかしながらアンケート調査を最終化する段階で、非財務的なコントロール・システムの中身を詳細化する必要性が高いと判断し、2年目の2018年度においては、管理会計分野およびPJマネジメント分野の先行研究に基づき、予算管理に引き続き焦点を当てながら、非財務的なコントロール・システムの中身を、PJのマネジメント要素である活動(PJマネジメントでのWBS)と、品質およびスケジュール(PJマネジメントでのQとD)から構成されるとし、全体として業績管理システムとしてのマネジメント・コントロール・システムを明らかにした。加えて研究テーマの探索性の高さから、リサーチサイトでのより詳細な調査が必要であると判断し、調査手法を参与観察やインタビューといった定性的な調査に切り替え、研究成果にまとめることとし、PMI日本支部との共同研究を新規に立ち上げ、PJマネジメントの実態についての情報収集・分析に務めることとした。結果、2019年度にはPMI日本支部が主催する年1回の全国フォーラムで成果を発表するまでに至った。 しかしながら、研究手法を切り替えたこともあり、十分に研究成果をまとめきれず、2020年度に本研究を延長することとした。PMI日本支部との研究は継続しており、2020年度のPMI日本支部の全国フォーラムでは前年度に引き続き研究発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初3か年の全体計画のうち、当該年度は延長しての4年目にあたる。当初の全体研究計画では、定量的なアンケート調査と定性的なインタビュー調査の結果をとりまとめて分析した上で、論文としてまとめることを想定していた。 しかしながら、製品開発分野を対象とするPGとPJベースの管理会計研究という、従来の管理会計研究とは異なる探索的な研究ということもあり、定量的なアンケート調査を前提に仮説としてのモデル構築に時間を要してしまい、最終的には、文献調査と同時並行で、定性的なインタビュー調査をリサーチサイトで実施することを通じて、製品開発のマネジメント・コントロール・システムを構築することとした。 そこで従来からのリサーチサイトでのインタビュー調査を継続するとともに、2018年度の後半から、プロジェクトマネジメントの世界最大の団体であり、知識体系のPMBOKを統括するPMIの日本支部との共同研究を立ち上げ、経営学全般で着目されているアジリティ、アジャイル(俊敏性)を、IT製品・サービスの開発プロジェクトで実現する為のマネジメント・コントロール・システムの構築を目指し、共同研究を継続する。2019年度のPMI日本支部主催の全国フォーラムでの発表、国際戦略経営研究学会での発表に続き、2020年度も再度、PMI日本支部の全国フォーラム、国際戦略経営研究学会での発表や論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初アンケート調査を外部業者を用いて行なおうとしており、その分の経費を見込んでいたが、最終的にリサーチサイトへのインタビュー調査を調査手法の中心とすることとした為、使用額が予定より減額となっている。 また、2020年3月上旬に予定してい海外学会(ドイツ)への出張を、新型コロナウィルスの影響を鑑み取りやめた為、使用額の減額となっている。 2020年度は前半については、新型コロナウィルスの影響で調査活動・学会発表等が大幅に制限されるが、後半において、例年通り、国内・海外学会への出張、調査活動を行う予定でいる。
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