製品開発では、製品戦略・製品開発戦略に基づく中長期的な計画の中に個別製品を位置付けてのイノベーションが求められるが、そのための予算管理を中心とするマネジメント・コントロールの役割は明確でない。そこで中長期的な開発計画としてプログラム(以下PG)、個別製品開発としてプロジェクト(以下PJ)を位置付け、それぞれの内容と関係性を整理し、予算管理システムを中心とするマネジメント・コントロール・システム(以下MCS)のモデル構築を目的に本研究を行った。 まず、PJの活動(PJマネジメントにおけるWBS)とスケジュール・品質(PJマネジメントでのQCDのうちQとD)を非財務的な要素とし、財務的要素である予算(PJマネジメントでのQCDのうちC)とセットで、業績管理システムとして定義した。 続いて、経営学において俊敏な対応を意味するアジャイル概念が着目される中、PMI日本支部との共同研究により、アジャイルPJを念頭にマネジメント・モデルの構築に着手、インタビュー調査・文献調査を通じ、業績管理システムに加え、メンバー間・職場への信頼や、現場への権限委譲、メンバー間での経営理念の共有、顧客志向の浸透が重要であることが示唆された。 さらに、個別のPJを長期的なPJ群の開発計画の中に位置づけ、計画段階・実行段階を通じ、予算管理により、活動、スケジュール、およびコストを巡る柔軟で俊敏な調整を促すことが、当初計画の達成に加え、新規PJや計画変更の提案をPJチームに動機づけることが明らかとなった。 2022年度はそれまでの研究成果を踏まえ、アジャイルな調整を促してイノベーションを促進するという点で、MCSの議論の延長として、マネジメント・コントロール・パッケージが、アジャイルなPG/PJ運営を可能にし、変化やリスクへの対応力を高めることが明らかとなった。
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