研究課題/領域番号 |
17K04056
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
潮崎 智美 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (70336072)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 会計 / IFRS / ドイツ / グローバリゼーション / ダイバージェンス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、IFRS適用後も残る各国会計の固有性およびその固有性を生み出す制度的諸要因との因果関係を、ドイツ企業の「逸脱事例分析」およびそれを補強する「インタビュー調査」を通じて解明することである。具体的には、2005年よりIFRSが強制適用されたにもかかわらずIFRSが適用されていない逸脱事例を、適用形態、エンドースメント、エンフォースメントという3つのレベルから分析していくが、平成31(令和元)年度は、Brexitやコロナ禍などにより世界情勢が大きく変化したこともあり、資本主義の多様性を前提とした会計制度のダイバージェンスを重視して分析を行った。 分析の結果、1960年代以降先行研究で指摘された各国の会計に影響を与える主な環境要因である法制度と資本市場の相違が会計制度の相違の原因として今なお説明力を有していること、近年の研究では法制度においてとりわけエンフォースメントの相違に焦点が当てられて研究が行われていること、ドイツ企業、とりわけ国内指向の中小上場企業においては英米型の会計観との相違が如実に反映されるような保守的な認識・測定実務において、非適用のインセンティブが起きやすいという仮説を導出した。 これらの成果として、令和元年度は、業績一覧に挙げているような国際会計研究学会(JAIAS)での統一論題コメント、それに関連した2019年12月の九州会計研究会での報告、同12月の九州大学リサーチワークショップでの報告「財務報告における基準と規範 ―Sunder [2016]の検討―」を行った。また、JAIAS研究グループ報告書に投稿した2つの論文は2020年度書籍の一部として出版される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Brexitやコロナ禍などによる世界情勢の大きな変化により、研究の方向性を制度分析に軸を置くものへと変更した。とりわけ、Brexitに伴うEU加盟国内の政治的パワーバランスの変化、英国における会計・監査制度改革のEU加盟国への影響など、研究の射程を拡げる必要性があったことから、実務についての分析が、若干遅れる結果となった。
|
今後の研究の推進方策 |
アウトプット重視の研究を進める。研究期間の延長をしたこともあり、残されている会計実務の分析を精力的に進めたい。研究を遂行する上での課題は、コロナ禍により、現地での調査や資料収集が困難であることである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学内業務多忙およびコロナによる出張キャンセルにより執行残が生じ、残額は翌年度に繰越申請した。次年度、国内外の出張が可能となるようであれば旅費に、そうでなければ、研究の総まとめとしての消耗品または人件費に支出する予定である。
|