研究実績の概要 |
今年度の研究成果は次の3つである。1つ目は、多国籍企業の利益移転の実態を確認するため、所在地別または地域別のセグメント情報を用いて行った実証分析である。成果として、論文「多国籍企業の関係会社取引と利益移転:2011年度税制改正前を対象とした実証分析」を『産業経理』に公表した(2019年1月)。2つ目は、マネジメント・アプローチの特徴である原則主義(principle-based approach)に対する市場関係者の考えを確認するため、アナリストを対象に実施したアンケート調査である。成果として、論文「会計情報の変容と利益の質:アンケート調査による分析」を『三田商学研究』に公表した(2018年4月)。3つ目は、ガバナンス改革やAIの台頭などによる資本市場の変容が当該研究に大きく影響することから、急きょ、企業と投資家の対話(エンゲージメント)の有効性について行った分析である。成果として、スティーブン・ボーゲル教授(カリフォルニア大学バークレー校教授)との共著「機関投資家とのエンゲージメントは日本企業を復活させるか?」を『企業会計』に公表した(2018年11月)。以上が研究成果であり、それ以外にも、北米のTop Tierと呼ばれる雑誌(The Accounting Review, Journal of Accounting Research, Journal of Accounting and Economics, Review of Accounting Studies, Contemporary Accounting Research)に掲載された実証論文を対象に、多国籍企業と資本市場に関する実証分析の文献レビューを継続して行った。 今年度の活動は、基礎を固めたうえでの実証分析の取り掛かりと位置付けることができる。今後は今年度の活動を活かすために、必要な情報を追加で収集・整理しながら、多国籍企業と資本市場に関する実証分析の成果を着実に公表したいと考えている。
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