研究実績の概要 |
本研究は、多様化する非財務報告書の類型化、変遷、トレンド、枠組みの理解、将来予測や企業ごとの位置関係の把握を目的としている。 本年度の研究は、前年度に引き続きナラティブ情報の側面からわが国企業における非財務報告書7,788冊の内容分析をおこない、過去10年間(2008年から2017年度)における全体動向について点検し、近年の非財務報告書の類型やトレンドについて再考し新たな知見や課題について整理を行った。特に分析手法について複数の手法を試案しながら、結果に与える影響について検証を行った。 非財務報告書の多様化が進むなかで、2014年を境にして収斂しながら明確なグループを形成する傾向にあり、各グループ間で重点移動が進んでいる。今後、企業の規模や特性から想定する利害関係者に馴染んだ情報開示が確立されていく方向にあり、個々の企業と利害関係者の双方のニーズに合致した情報開示を実践してくうえで、どのような報告書形態が最適であり、かつどのような情報を発信してくかを構想することが肝要となる。そのためには自らの組織が全体のなかでどこに位置しているかを把握することが必須であり、本研究で示した全体動向を表すプラットフォームは、全体における個々の企業の位置関係を把握し、目標とするグループを射程し、目標に到達するためにはどのような情報を注力していくべきかを検討するうえで役立つ。 また、国際社会における日本企業の位置関係を明らかにする第一歩として、日本企業を対象に従来と同様の分析プロセスを海外先進企業(Global100社2019年選出企業の非財務報告書)に応用して分析した。結果としては概ね3つのグループに分かれており、最大グループのなかにランキング上位企業が位置している。一方でより精度の高い分析をおこなうため、英語に対応した各種リストの作成や技術的課題の改善を行った。
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