研究実績の概要 |
企業グループマネジメントの課題のうちの1つは、経理や人事など、企業の本社部門で行われている間接業務を集約するシェアードサービスである。日本企業で シェアードサービスが導入されてから20年以上が経過し、初期の定型的な業務を集約化して効率化することを目的としたSSC(Shared Services Center)から、より上位の機能である戦略支援業務まで取り込んだSSCに変貌した企業グループも多い。 このような変化を分析するために、新型コロナウイルスの流行のために延期していたアンケート調査を、東証プライム市場に上場している国内会社1,838社に対して行い、229社から回答を得た。回収率は12.5%である。このアンケートでは、テレワークの実施などの働き方の変化についても質問しており、今後のウイズ・コロナ時代のシェアードサービスのあり方も検討している。回収したアンケートは現在集計中であるが、本社内にシェアードサービスセンターを設立している企業が現在でも多くあるという発見事項などがあった。また、過去に調査が行われていない、シェアードサービスを中止した企業と、シェアードサービスを実施していない企業からも回答を得ており、その理由を分析することで、シェアードサービス実施上の課題や、シェアードサービスに適した企業グループの形態や規模を推測できる可能性がある。 研究期間全体で8社に対する訪問調査を実施し、論文24本、書籍3冊、学会報告4回という成果を得た。日本企業は企業グループマネジメントを意識した経営を行っているものの、グループとしての全体最適化を意図的に促進しているわけではない。本研究により間接業務に関する全体最適(シェアードサービス)の現状と課題が明らかになったほかに、企業グループ全体での事業利益の最適化に関する研究も進めることができたと考える。
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