研究課題/領域番号 |
17K04072
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
上野 清貴 中央大学, 商学部, 教授 (90140631)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 収入支出観 / シュマーレンバッハ / ワルプ / コジオール / 動的貸借対照表論 / 給付・収支損益計算論 / 収支的貸借対照表論 / 収入支出観の萌芽・展開・再展開 |
研究実績の概要 |
本研究の研究課題は、「会計観としての『収入支出観』に関する総合的研究である。平成29年度は、ドイツ会計における収支的会計理論を検討した。具体的には、シュマーレンバッハ、ワルプおよびコジオールの収支的会計理論に関する学説研究を行った。研究業績は次のとおりである。 (1)「収入支出観の展開―ワルプの給付・収支損益計算論―」商学論纂第59巻第1・2号、平 成29年9月、25-64頁。(2)「収入支出観の萌芽―シュマーレンバッハの動的貸借対照表論―」経済学論纂第58巻第2号、平成30年3月、209-235頁。(3)「収入支出観の再展開―コジオールの収支的貸借対照表論―」商学論纂第59巻第5・6号、平成30年3月、317-358頁。 これらは「収入支出観」の思考の基礎になるものである。シュマーレンバッハに関して、まず、彼が動的貸借対照表を提唱する理由を明らかにし、その利益概念を確認した。次に、彼の提唱する動的貸借対照表の構造を説明した。そして最後に、彼の会計思考を再検討するとともに、彼の動的貸借対照表が収入支出観の萌芽であることを指摘した。 ワルプに関して、まず、彼の所論にしたがって彼の収入支出観に基づく損益計算を説明し、次に、彼の示した具体的な計算例を解説した。そして、これらに基づいて、この会計観のいくつかの特質を明らかにした。さらに、これらの特質を批判的に検討するという方法で、この会計観に内在する固有の問題点を解明し、これらの問題点を総括することによって、彼の収入支出観の限界を明らかにした。そして最後に、収入支出観のさらなる完成に向けて、検討すべき課題を示唆した。 コジオールに関して、まず彼の提唱する収支的貸借対照表論を概説し、次にこの会計理論を具体的な計算例によって説明した。さらに、彼の収支的貸借対照表論の特質を解明し、最後に、収支的貸借対照表論の展望を述べた、
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述したように、平成29年度の研究課題は、ドイツ会計における収支的会計理論の検討であり、具体的には、シュマーレンバッハ、ワルプおよびコジオールの収支的会計理論に関する学説研究である。このために、シュマーレンバッハの動的貸借対照表論、ワルプの給付・収支損益計算論およびコジオールの収支的貸借対照表論を取り扱った。これらは公表された研究業績であり、平成29年度はこれらのほかに、まだ公表されていないが、平成30年度の研究課題として予定していた「収入支出観による各会計システムの統一的説明」に着手し、その研究がある程度進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、収入支出観によって各会計システムを統一的に説明する。上述したように、これは現在進行中である。その研究対象は、取得原価会計、購入時価会計、売却時価会計、現在価値会計、公正価値会計およびキャッシュ・フロー会計である。場合によっては、他の会計、例えば一般購買力単位との組み合わせによる会計も、これまで会計理論および会計基準において提唱されているので、考察の対象とするかもしれない。 平成31年度は、収入支出観による会計の一般理論の構築を目指す。これを哲学的および論理学的思考により行い、本研究の結論とする。この理論構築を、哲学の存在論および認識論に関わらせて行い、記号論理学、とりわけ述語論理学を用いて行う予定である。 平成31年度はさらに、これらを著書としてまとめ、出版する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が68円であり、小額なので、平成30年度の消耗品等で使用することにした。
|