本研究の目的は、会計観としての資産負債観および収益費用観に代えて、「収入支出観」によって会計を統一的・論理的に説明することである。収入支出観とは、会計を収入および支出を中心として見、利益も1期間における収入と支出の差額として測定しようとする利益観である。 この目的を達成するために、本研究は次の項目を研究対象とし、またその概要となっている。(1)「会計観としての収入支出観」は、収入支出観の意味を明らかにし、収入支出観が会計の体系を統一的・論理的に説明しうる可能性を示唆している。 (2)「収入支出観の萌芽」(3)「収入支出観の展開」および(4)「収入支出観の再展開」は、それぞれ、シュマーレンバッハの動的貸借対照表論、ワルプの給付・収支損益計算論およびコジオールの収支的貸借対照表論を取り上げ、それらの学説と収入支出観の完成へ向けた展開過程を論じている。 (5)「収入支出観と購入時価会計」(6)「収入支出観と売却時価会計」および(7)「収入支出観と資金会計」は、収入支出観が会計の体系を首尾一貫して統一的に説明できることを証明している。これにより、収入支出観の普遍性を指摘している。 (8)「収入支出観の公理化」は、収入支出観の公理システムを明らかにするために、まず公理システムを一般的に説明し、次にコジオールによって展開された収入支出観の公理システムを各計算段階に応じて詳述し、さらにこの公理システムの特質を解明している。(9)「収入支出観の論理構造」は、本研究の総括として収入支出観の論理構造を明らかにするために、論理学における構文論、意味論および語用論の思考を適用し、収入支出観における会計目的論、会計測定論および会計構造論について言及し、収入支出観の論理構造の全体像を浮き彫りにしている。 以上が本研究の概要である。本年度は研究の最終年度であるので、本研究が完成し、著書を出版した。
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