2019年度は、資本投資及びM&Aに関する実証研究を日本国内及び中国において実施した。特に研究分担者である前田陽は、トヨタ自動車の事例研究に取り組んだ。トヨタ自動車については、研究代表者の山本昌弘とともに、中国成都のトヨタ自動車の生産工場でも聞き取り調査を実施した。その成果は、前田陽「トヨタ自動車における設備投資方針と原価改善」『明大商学論叢』(102巻2号、2020年)として出版されている。 M&Aに関する研究は、山本によるもので、山本昌弘『国際会計・財務論』(文眞堂、2020年)第9章「国際資本予算」において「海外進出の意思決定」及び「郊外投資決定のプロセス」として資本投資とM&Aの比較分析が展開されている。さらに海外投資における外貨換算問題にも注目し、「外貨表示財務所要における換算手順」『明大商学論叢』(102巻1号、2020年)において、会計処理が投資意思決定に影響を及ぼすことを論じている。 さらに、国内中小企業のM&Aについても山本は研究を行い、「中小企業が取り組むべきCSR」『CSR企業白書』(東洋経済新報社、2020年)として中小企業のM&Aを事業承継やCSR、SDGsと関連付けて議論している。大企業の海外進出は、直接投資であれM&Aであれ極めて戦略的であるのに対し、中小企業のM&Aは事業承継や雇用維持、サプライチェーン維持といったSDGs的意味合いが強いという特徴が見られた。 山本は、中小企業庁において「中小M&Aガイドライン」を座長としてとりまとめた。これは中小企業のM&Aにおいて行動指針を提示するものである。その成果は2020年度中に『銀行法務21』において「中小M&Aガイドラインの概要について(上)(下)」を連載する予定である(脱稿済)。
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