研究実績の概要 |
公正価値会計モデルに基づく測定が,実際に適用されるとどのようになるのかを知るために,一例として、IAS第41号「農業」を適用しているスウェーデンの森林企業であるHolmenの2016年度アニュアルレポートをbun分析した(Holmen2016,42,43,59,82)。 Holmenは,すべての森林資産を,公正価値により生物資産として認識される「育成森林(growing forest)」と,原価で表示される「土地」とに分けている。Holmen支配下の森林の価値を測定し得る市場価格は存在しないため,育成森林の公正価値は,当該森林から得られると期待される売却コスト控除後の将来キャッシュ・フローの現在価値を見積もることにより測定される。当該レベル3測定は,森林の収穫サイクルとみなされる100年間にわたって行われる。毎年のキャッシュ・フローは,収穫計画に基づく収穫予想量,将来予想価格およびコスト変化の見積もりに基づき,5.5%の利子率で割引計算される。 以上のような各種様々な予測・計画に基づき,2016年度Holmen支配下の生物資産の公正価値は17,446百万SEKとして貸借対照表に,また,生物資産の公正価値変動は315百万SEKとして損益計算書に測定・表示されたのである。 本年度の研究実績としては、Holmen社を代表例に、世界の農林水産業を営む上場企業が、日本では見られないIAS第41号「農業」の適用により大胆な公正価値測定を行い、かつ包括利益を多額に計上していることを明らかにしたことである。
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