研究課題/領域番号 |
17K04095
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小林 恵美子 金沢大学, 国際基幹教育院, 教授 (60319241)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会的絆理論 / 逸脱行為 / 日本人高校生 |
研究実績の概要 |
以下2つの論点を基に、Hirschiの社会的絆理論の適応性を明らかにした:①ジェンダー・ギャップ、②一般化可能性。 ジェンダー・ギャップについては、「社会との絆が逸脱行為を抑止する」という理論の命題を基に、以下の分析枠組みを設定した:日本人男子高校生よりも女子高校生の方が社会との絆が強いので、逸脱行為を自重する。その後、以下の手順で作業を進めた:1. 分析枠組みの妥当性を検証するため、大学1年生を対象に実施した回顧型Webアンケート調査のデータを使って、以下4つの主要概念を操作化した:(a) 親への愛着、(b) コミットメント、(c) 遵法的活動への参加、(d) 規範観念。「親への愛着」については、以下3つの側面について整理し、適切に操作、尺度化した:(a) 親の監督状況、(b) 親への同一化、(c) 親との親密なコミュニケーション。2.分析枠組みの実証的妥当性を検討した。検証においては、「社会との絆」の構成要素が及ぼす抑止効果を評価するため、相関分析と重回帰分析を併用した。重回帰分析では、逸脱行為や社会との絆との関連が指摘される、ひとり親家庭や親の学歴を統制変数として加えた。分析の結果、男子高校生よりも女子高校生の逸脱従事率が低い背景には、彼女たちの規範観念の高さが作用していることが確認された。 社会的絆理論の一般化可能性については、「社会との絆が逸脱行為に及ぼす抑止効果の程度に男女差があるのか」という分析枠組みを設定した。その後は、上記①の手順と同様に進めた。分析の結果、限定的ではあるが、日本人男女高校生による逸脱行為に対する社会的絆理論の分析的妥当性が確認された。これはつまり、アメリカで開発された社会的絆理論が、日本人高校生のいじめ行為の原因論として一定程度有効であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおり以下の2点を実証的に解明できたので、おおむね順調に進展している。①日本人高校生の逸脱従事率の男女差を説明する上で、社会的絆理論はどの程度有効であるのか(gender gap)、②社会的絆理論が提唱する抑止効果は、日本人男子高校生と女子高校生とでは異なるのか(gender generalizability)。
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今後の研究の推進方策 |
全世界からの研究者が集まるThe American Society of Criminology等で分析結果を発表し、有識者からの意見を参考に、本研究の知見の新規性について整理した上で論文を執筆し、国際ジャーナルに投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
為替の影響で差額が出ました。繰り越して、来年度の予定額に組み込みます。
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