研究実績の概要 |
2022年度は「ジェンダー・ギャップ」と「一般化可能性」という2つの論点を基に、セルフコントロール理論(Gottfredson & Hirschi, 1990)の異文化適応性について、2020年度と2021年度の分析結果を精査した。 2020年度は「ジェンダー・ギャップ」という論点を基に、「日本人男子高校生より女子高校生の方が逸脱防止に効果的な躾を受け、自己統制力が高くなるため、逸脱行為を自重する傾向が強い」という仮説を立て、大学1年生を対象とした回顧型Webアンケート調査データを使って、仮説の妥当性を立証した。 2021年度は「一般化可能性」という論点を基に、「幼少時代の効果的な躾を通じて育成される自己統制力は日本人高校生の逸脱行為を抑止する一方で、その抑止効果の程は日本人男子高校生より女子高校生の方が小さい」という仮説を立て、同上のアンケート調査データを使って立証した。 2022年度は渡英して研究協力者と上記分析結果について協議し、さらには渡米してAmerican Society of Criminologyの年次大会で識者と意見交換をし、本科研の研究成果の有効性を再確認した。アメリカで構築され、主にアメリカで検証されてきたセルフコントロール理論が、文化とジェンダーを超えて、日本人高校生の逸脱行為を説明する上で有効であること、更には、自己統制力が逸脱行為に及ぼす抑止効果の程は、日本人高校生に関して言えば、性別によって異なることを明らかにした。
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