本研究では、宮崎県の中山間地域を主な研究フィールドとしながら、移住者と移住先の地元民との相互行為を会話分析や相互行為分析を方法論とし分析し、様々 な社会的背景を持つ住民の共存の実態を、彼らの語りの中から明らかにしていくことで地域創成への貢献を 目指すものである。また、中山間地域での調査をする中で、観光を使った地域活性化に関わるようになり、相互行為からみる地域活性化を目的とした観光の実践についても分析してきている。2021年度は「地域住民の「当たり前」を観光資源へ―宮崎の郷土料理を事例に」の内容で、観光学術学会にて発表し、プロシーディング集 にまとめられた。また2020年度に引き続きコロナ禍の影響で県内外移動に制限がかかったが、主にこれまでの調査で撮りためたビデオデータのトランスクライブ化を大幅に進めるこ とが出来た。そのデータをもとに分析を進め、3つのテーマのもと論文を執筆中である。1つは中山間地域における内と外の境界線が相互行為の中でどのように 作られるのかをテーマにしたもので、観光を使った移住者増員を含む、地域活性化の取り組みを文脈とした、郷土料理に関わる会議場面の分析である。この一部は、 観光学術学会 (2021年7月)で発表した。もう1つは、やはり中山間地域の地域活性化場面の中で、話者の社会的関係性がどのように表示されるの かについて論文を執筆中である。また、観光事業における相互行為を分析することで、地域連携事業への貢献を図るべく2022年7月には「学生参与の実践から見る産学官連携観光事業」を発表予定である。高齢者の多い中山間地域への訪問調査は控えなければならない状況であるが、中山間地域での聞き取りやデータ収集をさせて頂い た方々には、限定的にではあるが調査報告も実施している。また、海外の共同研究者ともビデオ会議ツールを使い、研究報告を実施した。
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