研究課題/領域番号 |
17K04098
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
金澤 悠介 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (60572196)
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研究分担者 |
朝岡 誠 立教大学, 社会情報教育研究センター, 助教 (70583839)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会ネットワーク分析 / 社会関係資本 / 農村社会学 / コモンズ論 / 社会変動 |
研究実績の概要 |
本研究は幕末期から昭和期の農村を対象に、従来用いられていなかった定量的手法により、社会変動にともなう社会関係の変容過程を明らかにするものである。 以上の目的を達成するために、平成30年度において、中村吉治『村落構造の史的分析』の内容を検討した。その結果、中村吉治らは(1)ネットワーク論的な観点から村落を捉えており、(2)水利や林野利用などの共同行為の必要によって、家と家の紐帯が形成されると考え、(3)技術革新や貨幣経済の浸透などの社会変動が共同行為のありかたを変容させることで村落内のネットワーク構造が変動する、と想定していることが明らかになった。また、(4)共同行為の統括という観点で村落内の権力=階層構造が説明され、複数の共同行為を統括する家が村落内の権力=階層構造の中心になる、と想定していることも明らかになった。 以上の文献検討を踏まえ、次のようなかたちでデータ分析の方針をたてた。すなわち、(Ⅰ)労働のやりとり、水利の管理、林野利用という共同行為の契機ごとに、家ごとのネットワーク構造を明らかにした上で、(Ⅱ)各共同行為の契機をMultiplex Networkとみなし、そのネットワークの中心性などを検討することで村落内の権力=階層構造を明らかにする。(Ⅲ)(Ⅰ)と(Ⅱ)の作業を幕末期、明治期、大正期と比較することでネットワーク構造の変動を解明する、という方針を立てた。以上の作業を通じて、技術革新や貨幣経済の浸透などの社会変動が東北地方の農村のネットワーク構造にどのような影響を与えたのかを検討するとともに、中村らの理論的視点の妥当性も検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
『村落構造の史的分析』の内容面の検討はすすんだものの、その記述をもとにしたネットワークデータ作成およびデータ分析が未完了であるため、「遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、中村吉治『村落構造の史的分析』に基づくネットワークデータ分析を以下の方針で完了させる。 (Ⅰ)労働のやりとり、水利の管理、林野利用という共同行為の契機ごとに、家ごとのネットワーク構造を明らかにした上で、(Ⅱ)各共同行為の契機をMultiplex Networkとみなし、そのネットワークの中心性などを検討することで村落内の権力=階層構造を明らかにし、(Ⅲ)(Ⅰ)と(Ⅱ)の作業を幕末期、明治期、大正期と比較することでネットワーク構造の変動を解明する。(Ⅳ)そのうえで、ネットワークデータの分析結果と文献の記述が矛盾する場合、現地調査を行う。(Ⅴ)以上の作業を通じて、技術革新や貨幣経済の浸透などの社会変動が東北地方の農村のネットワーク構造にどのような影響を与えたのかを検討するとともに、中村らの理論的視点の妥当性も検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
中村吉治『村落構造の史的分析』の内容面の検討が予想以上に時間を要したため、ネットワークデータ作成およびデータ分析が未完了となってしまった。その結果、ネットワークデータ作成に充てるべき人件費・謝金、現地調査と成果報告のための旅費がともに支出できず、残額が生じてしまった。 最終年度においては、ネットワークデータ作成を行い人件費・謝金を、現地調査と成果報告を行い旅費を支出する。
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