研究課題/領域番号 |
17K04101
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
鈴木 宗徳 法政大学, 社会学部, 教授 (60329745)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 福祉 / スティグマ / 保守イデオロギー / 社会学 / 福祉スティグマ |
研究実績の概要 |
福祉スティグマ、すなわち福祉手当を受給する貧困層に付与される恥辱感について、イギリスやアメリカなど先進諸国における現代の事例を比較検討するとともに、各国の救貧行政にはじまるその歴史を探究することによって、スティグマ付与を促進する原因と考えられる、メディア上の言説および政策パターンの特徴を析出するという研究を行った。 本年度はとくに、イギリスのタブロイド紙における侮蔑的表現の分析に加え、“poverty porn”(貧困ポルノ)とも呼ばれるイギリスの一連のリアリティ番組について分析を行った。すなわち、一見するとドキュメンタリー風であるものの、貧困層の不道徳な振る舞い方に焦点化することによって、これを「他者化」し「悪魔化」する効果をもつとされる番組である。またテレビ番組とタブロイド紙が協働した例として、2012年のミック・フィルポット事件、すなわち自宅を放火した犯人の福祉受給の不道徳性に報道が集中した事例を取り上げた。その上で、こうしたメディア上の言説が、キャメロン連立政権がたびたび強調した「ブロークン・ファミリー」ないし「ブロークン・ブリテン」といった危機感を煽る言葉と呼応するものであったこと、さらに、2004 年に設立されたCentre for Social Justiceなど右派系シンクタンクの影響があったことを指摘した。 さらに、首都大学東京の研究者を中心とする「貧困と世論」研究会に参加し、日本における生活保護受給者バッシングの現状とその原因について検討し、同大学の子ども・若者貧困研究センターが主催する公開シンポジウム「貧困とメディア:バッシングを分析する」に報告者として登壇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りテレビ番組の分析を行ったが、19世紀イギリスにおける救貧行政についてはさらなる研究が必要がある。ただし、3年間の研究計画に沿っておおむね順調に進展しているとは言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、イギリスにおける福祉スティグマの背景となる1990年代から現在までの福祉改革の検討に注力する。その上で、保守系知識人の言説の影響や、19世紀イギリスにおけるブルジョア道徳についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の研究者との打ち合わせを目的とした渡航を取りやめたため、今年度の使用額が少なくなった。次年度に海外渡航を実施する計画である。
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