歴史社会学を歴史学研究のメタアナリシスとして基礎づけるという研究目的に対して、計画に基づいて研究を進めた。他分野において開発されてきたメタアナリシスの手法は、計量化が進んだ領域では、相対的に容易に応用が可能であるとの知見が得られる一方、歴史学における計量的手法の適用範囲は限定的であり、単純な移植による応用にも限界があることを確認した。 非計量的手法を中心とする歴史学の研究成果を横断的に再分析するにあたっては、対象の概念化、対象を同定する空間的・時間的枠組みについての批判的検討が必要となることを明らかにした。特にこの点では、歴史学と社会科学の諸ディシプリンとの間で概念化の前提が大きく異なること、また歴史学の内部においても異なる学問的伝統の間で共約可能性の低い概念化が十分な批判的検討のないまま流通していることが、大きな課題として切り出された。この中間的な成果は拙編『教養としての世界史の学び方』において公表されている。 計画の最終年度にあたる2019年度は、この批判的検討の理論的焦点として、歴史学における内部観測の問題を主題化し、歴史を書く主体と書かれる客体の分割をめぐる問題にとりくんだ。具体的には、(1)パブリック・ヒストリーと、(2)人新世概念という二つのテーマを中心に研究会などを通して検討を進めた。両テーマともに研究会での報告内容をまとめたブックレットなどで成果が公表されるほか、特に(2)については関連図書の翻訳および成果にもとづく著作の刊行が予定されている。
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