本プロジェクト最終年度である2019年度には、主に3つの課題、(1)欠損値を含む社会調査データの欠損値対応への確率モデルの応用と手法の改善、(2)欠測によるサンプルの偏りの補正手法を用いた推定方法の社会学データへの応用、(3)国際学会での成果の報告、を柱に研究に取り組み成果をあげた。第一の成果は具体的には、欠損値とりわけ項目非回答が存在するデータセットを扱う際に従来用いられてきたリストワイズ削除法を適用するうえで、分析対象とするケースと変数の最適セットを見つける手法を前年度の研究で提案を行い、今年度はさらにモデルを改善させた。第二の成果は具体的には、ランダムサンプリングに基づく社会調査において生じるユニット非回答による欠測のために生じるバイアスの補正手法を「社会階層と社会移動に関する全国調査」データおよび「階層と社会意識研究プロジェクト」調査データに応用し、サンプリングウェイトを考慮した分析を行った。分析結果より世帯タイプの経年変化に関する知見を得た。この研究はミラノビコッカ大学の研究協力者との共同研究により進めることで、社会学および統計学からのアプローチにより達成された。学際的・国際的に研究を遂行し議論する中でデータ分析の課題や社会における意識構造の解釈・理解や家族・ジェンダーに関連する社会学的インプリケーションをより深く検討することが可能となり、研究の進化につながったと考える。(1)および(2)の研究成果はそれぞれ論文(英語)としての公刊に結びつけた。第三に、国際学会(IFCS2019)において報告し、手法の応用領域について多様なフィードバックを得ることができた。
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