研究課題/領域番号 |
17K04106
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研究機関 | 神戸女子短期大学 |
研究代表者 |
永井 久美子 神戸女子短期大学, その他部局, 准教授(移行) (20615108)
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研究分担者 |
川村 高弘 神戸女子短期大学, その他部局等, 教授(移行) (20442395)
竹田 明弘 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (90330505)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バーンアウト / 保育職 / 影響要因 / ストレス / 離職 / 職務満足 |
研究実績の概要 |
平成29年度においては、ストレス・バーンアウトに関する文献調査(通年)、職務満足および離職要因に関する実態調査の分析(前期)、ストレス・バーンアウトに関するインタビュー調査(後期)を実施した。 文献調査では、一般理論についても網羅した。認知評価モデル(Lazarus & Folkman,1984など)、JDCモデル(Karasek &Theorell, 1990など)、個人―環境適合モデル(French,et.al,1982など)を対比しながら文献研究を実施した。 職務満足および離職要因に関する実態調査について、保育所では仕事への思いと自律感が、認定こども園では職場の雰囲気が職務満足に影響を与えることが明らかになった。また、保育所では有意に離職に影響を与える要因はなかったのに対し、認定こども園では職場の雰囲気が離職に影響を与えることが明らかになった。なお、本調査の一部については「第70回大会 日本保育学会」で報告(「保育者における職務満足の決定要因」)を行った。 さらに、関西圏の保育者(幼保連携型認定こども園2園・認定こども園1園(幼稚園型)・幼稚園1園 計4園)21名を対象としストレス・バーンアウトに関するインタビュー調査(後期)を実施した。本調査ではFrench,et.al(1982)の提唱する個人‐環境適合モデルに依拠した。ここでは、認知したストレス要因に対して、保育者は対峙しようと行動すること、教育や能力などの不足に関するストレス要因については、おおよそ時間とともに解消に向かうことがわかった。対照的に、業務のあいまい性、業務の複雑性、業務量や労働時間については、個人レベルでの解決が困難であり、バーンアウトにつながる可能性が高い要因であることが示唆された。なお、本インタビュー調査については平成30年度に実施される「第71回大会 日本保育学会」にて報告を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度では、文献研究、職務満足・離職要因に関する実態調査の分析、インタビュー調査を実施した。当初の予定では、これに加えて、より大規模な職務満足・離職要因に関する実態調査の分析を行う予定であったが、これについて実現することができなかった。 その理由としては以下である。 1.文献研究の結果、ストレス・バーンアウトが直接影響を与えるのは業務の生産性、および職業からの離脱であり、そもそもの研究目的であった職場からの離脱を念頭においた場合、それとストレス・バーンアウトを関連づける介在要因について再検討する必要性が生じたこと。 2.そこで介在要因を抽出するために、インタビュー調査は、バーンアウトに影響を与える要因により傾倒した調査を実施せざるをえなかったこと。 3.本年度実施した予備的実態調査では、調査項目についていくつか問題点が発見され、項目および因子構造について再検討が必要になったこと。
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今後の研究の推進方策 |
<30年度> ①(4月)「第71回大会 日本保育学会」の口頭発表に向けて、研究討議のために議論を深める。②(5月)「第71回大会 日本保育学会」にて、口頭発表「保育者のバーンアウトにつながる要因」を行う。③「質問紙(本調査)」の作成〔全員〕(6月~7月)では、文献調査及びインタビュー調査(予備調査)等による知見の整理を行う。④質問紙調査(本調査)を開始し、(8月~9月)、その分析を行う(10月~11月)。この調査は全員関わり、議論を深める(12月~3月) <31年度> ①「研究報告書」の作成〔全員〕(4 月~7 月)では、文献調査および質問紙調査(本調査)等による知見を整理したものを冊子にまとめ、保育現場での参考資料として耐えうる研究報告書を作成する。「研究報告書」の配布を行う。②冊子を質問紙調査(本調査)協力園、インタビュー調査協力園に配布を行う。(8 月~12 月) ③研究会・シンポジウム・研修会の実施(6 月~10 月)では、学会において、研究成果の発表を行う。④「研究報告書」を用いた研修会の実施〔全員〕(1 月~)では、インタビュー調査協力園において、研修会をアクション・リサーチと位置づけて実施し、その結果をまとめる。⑤メーリングリスト、WEBサイトについては、研究討議のために議論を深める(11 月~3 月)。⑥平成31 年度前期には下記の事項の整理をはかり、「研究成果報告書」へとまとめていく作業(インタビュー調査の結果と分析・文献調査の結果と分析・研究会、シンポジウムの報告、及びメーリングリストの運用報告・研究成果についての総括と提言)を行う。「研究報告書」の作成では、インタビュー・質問紙調査(本調査)を通して、離職とストレスをつなぐ影響要因を検討し、保育者の早期離職において、どのような側面が影響しているのかを踏まえて「研究報告書」を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後は、インタビュー調査で得られた知見の一般性を確認するために、広くアンケート調査を行う予定である。その為の資料作成代・郵送代等に使用する計画である。
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