研究実績の概要 |
2018年度は、過去15年間の保育職をとりあげたストレス/バーンアウトに関する国内実証研究を文献調査した。久保・田尾(1994)は、「そもそもバーンアウトとは過度で持続的なストレスに対処できずに,張りつめていた緊張が緩み,意欲や野心が急速に衰えたり,乏しくなったときに表出される心身の症状のことである。(中略) 今まで元気に働いていた人が,突然,燃え尽きたように働かなくなる,あるいは,急にやめてしまうことがある。これがバーンアウトである。」としている。バーンアウトとは強度なストレスからくる諸症状、深刻なストレス反応と考えることができ、ストレスから発症する医学的所見としてうつがある。うつと、バーンアウトの間にも臨床診断レベルでは基本的に大きな差異がないと言われている(入江,2017)。ストレスから派生する症状(バーンアウト、うつ)を明確にすることなしに、バーンアウトの研究としての独立性、一連のストレス研究としての意義を主唱するには限界が発生することになる。 バーンアウトについてはほとんどの場合、Maslach and Jackson(1981)の尺度(MBI尺度)を利用していた。この諸症状を「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成の後退」の3つでとらえられている。井川(2018)の実証研究でも、情緒的消耗感と脱人格化という症状について、両者(バーンアウト、うつ)で類似の構造がみられた。ただし、国内実証研究では、ストレスから派生する症状(バーンアウト、うつ)の関連が明確に整理されないまま、既存の尺度を用いて行われた研究が多いことも明らかになった。この研究で重要となるのは、仕事に関する熱意があり、これまで仕事に打ち込んできた保育者が、ある種の原因を契機に急速に意欲を減退させることである。ここに着目した調査分析モデルを作成することが、この研究にとっても意義があるのではないかと考える。
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