研究課題/領域番号 |
17K04109
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
梁 仁實 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (20464589)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 韓国映画 / 植民地 / 女/性 / 境界 / 消費 / 空間 |
研究実績の概要 |
本研究1年目の今年(2017年度)は韓国で作られた植民地をめぐる映像が韓国の歴史のなかで忘却されていた様々なマイノリティーを呼び起こしていることを明らかにした。とりわけ、植民地期を表象する韓国歴史のなかで女/性は男/性をサポートする脇役としてしか登場してこなかった。しかし、近年韓国で作られる植民地をめぐる映像は既存の表象から進み、今まで映画のなかで表象されてきた様々な境界を超えようと試みた。 本研究ではとりわけ、植民地をめぐる表象のなかでもジェンダーに焦点を絞り、新しい女/性像がどのような空間でいかなる新しい表象を作り出しているのかに注目した。そしてこうした映像のなかに登場する女/性はエスニシティの境界、ローカルな境界、空間の境界、ナショナルな境界を乗り越え、今までとは異なる人物像を作り出していることも明らかにした。 この研究成果は2017年9月7日から9日までリトアニア・ヴィリニュス大学で開かれた国際学会Nation, Gender and History:Asian Cinema in Perspectiveで口頭発表「Hybridity of Keijo in Cinema-The Representation of the Colonial City of Kyeongseong」を行った。本発表ではとりわけ2015年から2017年まで製作・公開された韓国映画において、歴史上の女/性像、映画における女/性像、そして新しいジェンダーがどのように表象について分析されたかについて分析した。 また、同年11月には韓国の東国大学で行われた国際学術大会において在日二世の映画監督・李學仁の作品世界について分析し、植民地の記憶がまだ「過去になっていない」ことについて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年は近年作られた韓国映画を対象としていたが、さらに過去にさかのぼってテクスト分析を行うことはできなかったため「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる2018年度は研究1年目で行った文献調査や資料収集をさらに進めながら、さらに近年の映画のみならず過去の植民地をめぐる韓国映画を探っていく予定である。そして、時系列的に資料の整理を行い、研究成果の発表も並行して行う。 これからはこうした映像や登場人物のイメージが帝国の経験をもつ日本においてはどのように消費されていくにかに焦点を当てて、研究を進めていく予定である。 また、近年作られた映像のみならず、過去の映像も探り、植民地の過去をもつ国々の同表象がどのように行われているのか、時系列的に比較研究も行っていく。これらの映像は同じ時代を描きながらもテクストが作られる時代や地域によって異なるイメージとしてスクリーンに登場する。また、その映像をめぐる解釈も様々なであり、とりわけ、ナショナルな境界を超えると、こうした表象はさらに変容しながら消費されていく。これからはこうした消費の変容にも注意を払いつつ、研究を行っていく予定である。
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