研究課題/領域番号 |
17K04110
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
竹村 祥子 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (20203929)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 世帯分離 |
研究実績の概要 |
津波被災後の人生の転機は,自然災害や戦災からの復興事業とのかかわり方や生活の再興にどのような立場でどのようにかかわるかで違っていることは、2018年度までの聞き取り調査で明らかとなったが、被災後も家族と一緒に生活し,昭和8 年の防潮堤再建の土方として「稼ぐ」か,家業を手伝って生計をたてるか,店の従業員(奉公に上がる)として他家での生活をスタートするかによって,太平洋戦争までにたどる人生行路にも違いが出てきていた.これは,昭和8 年の津波の被災が実家にどの程度の打撃を与えたか,継ぐことのできる家産がどのようにあったか,きょうだいの順位(長女(あととり娘)か末っ子か等)とも関係している。 2019年度は、(1)上記の点を具体例をもとにかかわりのある要素を精査し、1.聞き取り調査の対象者全員のライフコース別のまとめを作成する。2.被災体験が、ライフコースのどの時機に出会っているか、進学、就職(「なりわい」)、結婚や出産、子育てにどのような影響があったと語られていたか、家族メンバーへの影響はどのようなものだったか。居住地が変わったことの影響、または被災前の居住地にとどまるための方策、理由を検討することにあった。 また、(2)東日本大震災後の10年を見通した次世代の家族支援策作成に寄与する知見を明らかにすることと、家族の生き残り戦略の意味をまち(地域)の再建とのかかわりからどのような効果があるのかを考察することも研究の課題であった。 2019年度の成果として、(2)東日本大震災後の10年で、家族の生き残りにはどのような傾向があったかについては、「18歳未満の人のいる世帯」が大きく変化し、「母子世帯+父子世帯」の比率が高まり、「夫婦と子どもから成る世帯」の比率も高率となったことを明らかにした点である。これは、仮設住宅での生活が「世帯分離」を促したことの結果と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年2月段階では、調査対象者の入院等で面接調査が2019年度内に達成できない状況であったため、2020年度に研究を続行する予定としていた。 2020年5月現在、岩手県三陸地域在住の高齢女性への面接は、コロナウイルス対策から自粛し、6月末日までは、対象者訪問面接は控えることが必要と考えているので、調査研究については、中断している。 したがって当初予定していた(1)上記の点を具体例をもとに関係する要素を精査し、1.聞き取り調査の対象者全員のライフコース別のまとめを作成する。2.被災体験が、ライフコースのどの時機に出会っているか、進学、就職(「なりわい」)、結婚や出産、子育てにどのような影響があったと語られていたか、家族メンバーへの影響はどのようなものだったか。居住地が変わったことの影響について明らかにしていくことが、遅れている。 2020年度中には面接調査を行い、上記課題について考察していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終報告書作成までに、調査対象者への聞き取り調査は、必要であるため、緊急事態宣言による自粛を過ぎて、対象者への調査が可能になった時点で、研究を再開する予定であるが、事態の変化を勘案して、面接調査以外の方策についても検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月「延長願い」を提出した時点では、調査対象者の入院等で、2019年度中には、面接調査ができず、5月の連休時に面接調査をする予定であった。 2020年5月現在、コロナウイルスの緊急事態宣言等の影響で、面接調査ばかりでなく、国立国会図書館の休館の影響で文献研究も進んでいない。 緊急事態宣言解除後、岩手県三陸地域に居住する女性への訪問面接調査自体が適当であるかを検討し、他の方法での調査の可能性を探っている。 文献調査については、国立国会図書館が開館する6月以降に再開する。
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