研究課題
基盤研究(C)
本研究は、福祉国家を「国家」と「社会」による共同統治の秩序として批判的に捉える視座から、日本近代における複数の「生存権」の議論と実践について考察した。本研究で主な対象とした時期は、大正の米騒動、関東大震災の後、そして敗戦直後の混乱期である。これらは、日本近代史のなかで、「国家」の機能と正当性が大きく揺らいだ時期である。多様な主体によって構成される複合体としての福祉国家の動態のなかで、多様な「生存権」がせめぎあう様子を描き出した。
社会学
本研究は、福祉国家を「国家」と「社会」による共同統治の秩序――本研究では〈福祉国家‐福祉社会〉体制と呼んだ――として批判的に捉えることをめざした。〈福祉国家 - 福祉社会〉体制への批判的視座は、〈人権としての生存権〉の存立を問うために不可欠であると思われる。本研究は、こうした視座から、日本近代の歴史のなかで失われていった多様な「生存権」の論理と実践を描き出すことを通じて、近代的「生存権」に収斂しない根源的な「生存権」の存在を示した。