研究課題/領域番号 |
17K04123
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
茅野 恒秀 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (70583540)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地域資源管理 / 地域間連携 / 資源化のダイナミズム / ネオ内発的発展論 / 資源を介した社会ネットワーク / 共感する他者 / 環境史 |
研究実績の概要 |
2019年度は、研究期間の3年目として、以下の3つの取り組みを進捗させた。 第1に、長野県諏訪市における事例研究を基盤に、二次的自然の資源管理の現状とメガソーラー開発問題との関係を、地域の環境史・開発史から解明した論文「集落はなぜ共有地をメガソーラー事業に供する意思決定を行ったのか : 霧ヶ峰麓の環境史・開発史からの考察」を『信州大学人文科学論集』に公表した(査読あり)。本論は2015年以来、現地に生起している地域開発問題の構造分析を行った成果であり、本研究を契機として諏訪地方の各所で学習会等に取り組んでいる。また、2年目までに遠隔地域間連携に重きを置いた事例研究の成果を刊行したため、地域資源管理の文脈を掘り下げるための学会発表を日本社会学会と環境社会学会で行った。 第2に、研究期間を通じて実施している地域資源管理と遠隔地域間連携の比較事例研究のための調査を実施した。(1)森林資源を介した遠隔地域間連携については、木育に取り組む全国各地の市町村や、長野県上伊那地域、ユネスコエコパークに指定された群馬県みなかみ町における調査を継続した。調査結果は木育サミット(2020年2月)等で一般市民向けに発信した。(2)地域資源管理のフロンティアとしての事例を開拓するため、長野県安曇野市における薪資源に関する現地調査を展開した。調査結果は安曇野市里山再生計画推進協議会で報告した他、長野県内における薪・森林関係のワークショップで発信した。 第3に、比較事例研究の結果をふまえて地域資源管理の社会的技術の理論研究を進めるため、環境社会学と社会計画論の交錯領域における共編著書『環境問題の社会学』の出版準備を進め、2020年度に東信堂より発刊予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した調査地において計画どおり調査を実施し、安曇野市などで掘り下げた現地調査を実施することができた。各地で住民や行政と緊密にコミュニケーションをとり、研究の中間的成果を適宜、フィードバックしながら進めている他、論文・書籍・シンポジウム等で成果発信を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、研究を以下のように進展させる。 (1)研究期間のまとめ期を迎えるため、個々のフィールド研究の成果をまとめ『地域資源管理の社会的技術』と呼ぶべき単著の構想に基づき草稿執筆を進める。 (2)個々のフィールド研究はアクションリサーチ型の研究に発展しているものがある(みなかみ、上伊那、安曇野、霧ヶ峰、木育等)ため、論文・図書以外のアウトリーチを豊富化させる。 (3)世界各地におけるネオ内発的発展論をベースにした研究や資料収集を通じて、新たな理論的展開の受容に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、2-3月に計画した年度末の調査出張をいくつか取りやめた他、2020年度後半に研究専念期間を得られる見込みとなったため、主として旅費を次年度に繰り越すこととした。
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