今年度は研究成果の総まとめの時期にあたる。昨年度に行った単著の出版を踏まえて、その後の研究の展開を示すべく本のチャプターや論文を執筆した。また、いくつかの研究報告・アウトリーチ活動を行うことで、研究成果の多方面への発信を勤めた。一つは、所属する大学研究室と交流のある台湾大学社会学部との国際ワークショップ(オンライン)で、昨年度に出版した認知症の予防と共生との関係に関する理論的な論文をベースとした英語での報告・ディスカッションを行った。二つ目としては日本認知症ケア学会の東北ブロックの大会で特別公演を行い、認知症ケアに携わる現場の人たちに向けて、認知症ケアにおける基本的な考え方・思想の方向性を提示した。三つ目としては、所属する研究機関の学内連携機構である高齢社会総合研究機構での授業やワークショップに研究成果を提示し、工学や看護学などの多様なバックグラウンドを持つ人たちに研究成果を発信し、研究に対しても意見をもらうことができた。四つ目としては日本医療政策機構の「健康長寿時代の介護システムの構築」プロジェクトのタスクフォースメンバーとして参与し、研究成果に基づく提言案を報告しつつ、複数のディシプリンの研究者と議論を行った。 新型コロナウィルス感染症の流行の中で予定していた国際学会への参加等は実施できず、また、進行が遅れていた認知症の人たちを包摂する地域での実践に関する調査、レビー小体型認知症サポートネットワークの活動のアクションリサーチが進められなかったが、その代替として、理論的な検討を行い論文を書くことで、これ以降の認知症の社会学的研究、および国際的な発信に向けての基礎を固めることができた。
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