研究課題/領域番号 |
17K04131
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
福田 恵 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (50454468)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 森林資源 / 村落社会 / 農山漁村 / 林業移動 / 小集落 / 人の移動 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの影響で予定していた調査が困難となったため、これまでの調査過程で重要だと判明した出稼ぎ受入地および排出地(北海道、秋田、宮崎、大分、和歌山、奈良、三重、岐阜、長野など)の資料を収集・整理し、諸事例の位置づけと研究の体系化を図った。また、可能な限り電話調査を実施するとともに、これまでの調査データを元に、書籍の刊行と論文投稿を行った。詳細は以下の通りである。 資料の収集・整理については、北海道の山林行政、林業労働に関する資料を収集し、道内の林業特性と労働移動について把握した。また北海道および樺太への主要労働供給地であった北東北、特に秋田県米代川流域についても資料および聞き取りの整理を行った。国有林を中心とした北日本型の林業移動に対して、民有林を基本とした九州型の林業移動に関しても資料整理を行い、宮崎県北部における木炭、木材市場の展開と労働移動の関連および大分県沿岸山間部からの林業移動の実態を把握した。中部型の林業移動については、御料林との関わりおよび三信遠地域の移動の実態を把握した。近畿型の林業移動については、空中滑走や筏の技術の普及と出稼ぎへの影響について検討した。以上の成果の一部については、『社会学評論』にて公表した。 また、主要調査地域(A・兵庫県)の地域的特質を把握する上で重要となる比較地域(西中国山地)について電話調査を行った。移住に関する調査データを元に、『日本の科学者』にてその成果を公表した。 人の移動や移住に関する研究史を整理するとともに、林業移動と集落移転などの諸事例の位置づけをおこない、それらに通底する社会的論理(人的関係網および「結びながら切る/切りながら結ぶ」)を抽出した。その成果は、『年報村落社会研究』にて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、調査が困難となったが、中心的な調査をほぼ終えていたこともあり、資料の整理、論文執筆、出版等に力を入れた。結果としては調査面でやや遅れているものの、成果のとりまとめなどは予定以上に進んだ。 調査地を5ブロック(A:但馬地方及び鳥取、B:中部、C:四国、D:近畿(三重を含む)、E:九州)にわけて調査を進めてきたが、今年度の資料整理(調査データと既存資料との対比検討)によって、近畿、九州、中部の各地域内部の地域特性および林業移動の実態が立体的に明らかになってきた。くわえて、北日本型の位置づけもおよその目途がついたことで、全国的な林業移動の実態とその体系に関する糸口をえた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで整理したデータと林業移動の全国的俯瞰図をもとにして、主要調査地となったA(兵庫県)・C(高知県)・B(富山県)および比較地域(西中国山地)のデータ整理を行う。A(兵庫県)のうち、小集落の調査については、すでに主要資料を得ているので、その資料の解釈について手紙および電話等で調査を行う。状況が許せば、他の調査について補足調査を行うが、できない場合は、これまでに収集した資料の整理、データ化を進め、報告書を作成する。また、一連の研究の基礎になる家村論に関する論文執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、予定していた調査出張をキャンセルせざるをえなかったため、関連する備品等の購入についても見送った。調査直前に購入すべき備品であるので、次年度の調査時に購入することとした。
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