令和4年度は、令和3年度までの調査成果を踏まえて、Aブロック(兵庫県但馬地方)と比較調査地(島根県益田市匹見町)で資料調査を行った。コロナ禍の影響があり、遠方での調査が依然として困難だったため、近隣の島根県益田市匹見町で詳細な調査を行うとともに、但馬地方と匹見町の中間に位置する安来市および広島県でも情報を収集し、中国山地の東・中央・西の特質と全国での中国山地の集落及び人的移動の地域性について検討を行った。 主たる結果は以下の通りである。兵庫県北部の小集落の調査を、手紙にて実施し、集落移転前の地域記録について情報、資料を収集した。比較調査地の島根県益田市匹見町、安来市のいくつかの小集落について調査を行った。また、一連の研究成果について、博物館での招待講演をおこない、調査方法のプロセスとそのあり方について日本村落研究学会において発表を行った。匹見町の事例については報告書も作成した。 全期間を通して、調査地域に関わる林業移動の実態が明らかとなり、その背景にあった移動をめぐる排出地域と受入地域の全国的な俯瞰図を得ることができた。事例調査では、Cブロック(四国・高知県・愛媛県)からAブロック(兵庫県但馬地方)への移動のほか、Dブロック(奈良県中南部、三重県)やBブロック(中部地方・長野県)への移動を把握した。また、比較地域として、島根県益田市匹見町における受入状況、秋田県北秋田市における輩出状況について実態を把握し、九州(Eブロック)における大分から宮崎への移動ルートを明確化した。この移動を支えた小集落の状況について、定点調査地としたAブロックのほか、流入者調査、派生地域調査(B~Eブロック)および比較地域でも集落特性を検討し、小集落の役割を比較検証した。以上の調査結果について、資料整理と論点の明確化を行い、学会発表9件、論文執筆7件、刊行物の発刊2件の研究成果を公表した。
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