研究課題/領域番号 |
17K04133
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松尾 寛子 京都大学, 学生総合支援センター, 特定准教授 (10760374)
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研究分担者 |
太郎丸 博 京都大学, 文学研究科, 教授 (60273570)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大卒新卒採用 / 就職活動 / 採用選考 / 人的資源 |
研究実績の概要 |
日本の大卒新卒者の採用・就職活動は120年近くの歴史を持ち、日本に固有の慣行として深く社会に根付いている。昨今では、その採用活動の開始時期を巡って毎年、政府・経済団体・大学等の話し合いが持たれ、大学教育の担保と人材獲得という2つの側面から議論が続いている。本研究は、大卒新卒採用・就職活動の最適な時期と期間、採用選考手法と評価基準の妥当性について新たな知見を提供することを目的に進めている。 大卒新卒採用・就職活動の時期と期間については「長期化」と「早期化」が大学教育と企業活動を阻害する要因として大きく取り上げられているが、本研究では特に「長期化」を取り上げ、文献調査とアンケートにより、長期化の実態を明らかにする。就職活動の学生にとっては就職活動が長引くことで通常の大学生活や研究活動に支障が出るという影響が考えられ、企業は採用活動が長期化することで、採用コストが増大し、競争力が低下するという影響が考えられる。これらの悪影響が実際に起こっているのであれば、改善は喫緊の課題である。しかし、文献調査からは過去から現在に至る過程で活動期間が伸びているという意味での「長期化」傾向は見られず、活動期間の伸び縮みは政府方針が大きく影響することが明らかになった。また、マスコミ等による報道についても、時期が変更になった際には盛んに「採用活動の長期化」を喧伝するが、そうでない時期の報道数は少なく、「長期化」という単語が実態なく使われている可能性があることが明らかになった。 一方で、就職活動を行う個々人の活動については、「過度に長期に及ぶ」ことは弊害であるが、「じっくりと会社を選びたい」という要求もある。就職活動を経験した学生へのアンケート調査からは、3~4ヶ月の就職活動期間が望ましいという回答を得、今後は企業が望む採用活動期間との妥協点を見出したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3カ年計画のうち、文献調査と学生へのアンケート調査(一回目)が完了している。平成30年度はこれらのデータをもとに、報告書や論文にまとめることと、企業へのアンケート、インタビューを行い、データを収集する予定である。研究は概ね計画通りに進んでおり、特に阻害要因と想定される事象もない。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度中に行った文献調査と学生インタビューの結果を論文としてまとめることが第一の課題である。それと合わせて、企業アンケートを実施し、採用期間として望ましい期間や採用選考手法・評価基準についての現状を把握する。その後、個別に企業インタビュー調査や企業内調査を行う予定である。インタビューや企業内調査では人事データの提供を依頼することになるため、企業の協力が得られるかどうかがポイントになる。研究の意義を丁寧に説明し、企業側への研究結果報告を行うことで協力を募りたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
学生アンケートの結果集計を業者に委託せずに研究者自身が集計したこと、データの分析に無料の統計パッケージを用いたことから次年度使用額が生じた。平成30年度以降、学生アンケートを複数回実施する予定で、データ入力業者に委託する予定であることと、有料の統計解析パッケージを購入予定である。
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