研究課題/領域番号 |
17K04134
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
増田 和也 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90573733)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 木炭生産 / 森林資源利用 / 原料調達 / 森林保全政策 / 超域ネットワーク / 土佐備長炭 |
研究実績の概要 |
本年度は、木炭生産現場の現状を把握するために、国内の二つの地域およびインドネシアの一つの地域において現地調査を実施した。 国内では、高級炭の産地の一つである高知県室戸と国内最大の木炭生産量を誇る岩手県二戸・久慈地域で調査を行った。高知県室戸における生産地は室戸東部と西部の二つに分かれる。室戸西部では地域内山林のカシ類一般を原木としていた。一方、室戸東部では原木をウバメガシに特化していたが、これは地区内では枯渇状態となり、大半の製炭業者は他地域から原木を入手していた。そこでは、業者や組合が原木調達を請け負う場合もあった。しかし、原木調達地が次第に遠方に移り、調達コストが高騰するなか、一部の個人製炭者は原木をカシ類一般に変え、地区内で自己調達するかたちに回帰していた。 岩手では、おもにナラを原木とする黒炭が生産され、個人製炭者の他、林業関連企業が製炭業を営んでいる事例も見られた。個人製炭者は、高齢化のため業者から原木を購入していた。原木業者は、国有林の払い下げ地で木材を調達し、木炭原木以外にも、チップ材やシイタケ栽培用原木として販売していることがわかった。 国内調査に加えて、インドネシア・リアウ州内陸部で現地調査をおこなった。従来の調査地では、アブラヤシ大農園の造成地内に放置された倒木を木炭原木として利用していたが、現在は大農園とは別に、私有地内の二次林から特定樹種を購入することで原木を確保するように変化していた。生産された木炭はスマトラ南部の業者を介して日本に輸出され、日本人業者が定期的に製炭現場を訪問し、技術指導をしているという。国内木炭市場は国産高級炭と国外産廉価炭に二極化しているが、後者の生産においても、品質を維持・向上させるための対応がなされていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、当初計画にもとづき、1)文献調査による基礎情報の収集、2)高知県内での現地調査、3)インドネシアでの現地調査を実施した。文献調査では国内で入手可能な文献資料・統計データをもとに、国内および国外産の木炭生産量の推移とその背景について検討した。高知県内の現地調査では、高知県室戸市および東洋町の木炭生産者を対象に聞き取り調査を実施した。先方の都合等により、一部の生産者への聞き取りができていないものの、室戸における木炭生産のおおよその形態を把握することができ、その原木調達と生産のあり方を大きく3つの形態に整理できると考えている。また、県内の行政機関からも木炭生産に関する動向について聞き取りをした。インドネシアでの調査では、リアウ州の内陸部に位置するプララワン県現地調査を実施し、木炭の生産方法、原木の種類とその調達先、雇用関係、出荷・流通ルート、新規参入者についての情報を入手することができた。以上のとおり、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、平成29年度の現地調査での情報を整理するとともに、新たに次の項目に取りかかる。1)木炭原木の入手先・伐採業者への聞き取り、2)高知県外の木炭生産地での調査、3)国内流通業者・問屋への聞き取り、4)インドネシアにおける木炭の流通についての現地調査。1)では、原木の外部調達についての調査を進める一方で、原木の自己調達にこだわる生産者への聞き取りも行い、原木調達をめぐり異なる対応とその背景を比較する。2)では、高知県以外の高級木炭生産地における近年の動向について把握することを目的に、備長炭生産地として知られる和歌山県南部と宮崎県北部で木炭生産者および関係機関への調査を計画している。3)では、高知県の木炭生産者の出荷先を手がかりに、国内の木炭流通について明らかにする。また、国内産および国外産木炭の市場動向について把握するため、双方を扱う木炭問屋への聞き取りを計画している。4)では、前年度の現地調査で明らかになったスマトラ北部および南部の木炭出荷先と、それらに関係する日系企業への聞き取りを計画している。以上の調査を通じて、2004年の中国の木炭輸出禁止以降の日本およびインドネシアにおける木炭生産の動向について分析を進めていく。
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