フィンランドでは、2023年1月1日、社会福祉・医療保健サービスの組織化責任が、基礎自治体から、これを束ねて新設されたウェルビーイング・サービス州に移管された。最終年度である2023年度の研究では、基礎自治体および州のレベルにおける新制度への移行後の現状と課題を明らかにするために、全国21州のうちの2州、フィンランド北部ラップランド・ウェルビーイング・サービス州、同南西部ヴァルシナイススオミ・ウェルビーイング・サービス州および、これらの州を構成するロヴァニエミ市、イナリ市、サッラ市、また、トゥルク市、パイミオ市、ルスコ市計6市の関係者14名にインタビューを実施した。 インタビューからは、市から州への移管はおおむね順調に行われたと評価されている一方、改革にともなう混乱が起きている分野として、学校保健が挙げられた。 州のサービスネットワークは2024年に決定される。自治体は、自らの自治体の社会福祉・医療保健サービスセンターの存廃に強い関心を寄せている。2025年には、雇用対策事業が国から自治体に移管されることが決定している。 フィンランドの社会福祉・医療保健改革をめぐっては、(1)住民に身近な基礎自治体によるサービス提供の合理性があらためて認識された他、(2)フィンランドにおける産業保健制度の特殊性、(3)改革が自治体経営に与えたインパクトが明らかになった。 この結果は、「フィンランドの社会福祉・医療保健改革―ウェルビーイング・サービス州と市町村の視点から」として論文にまとめ、投稿を終えた。
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