本研究は、中国・三峡ダムにともなう住民移転と生活再建を対象として、移住から約15年~20年経過段階における中長期的な帰結について社会学的に解明することを目的とした。その成果として、移住政策面では、2006年から導入された事後的支援策に特に注目し、この仕組みと実態、移住者の認識を把握した。現地調査では、経済的に自立した移住者は移住経験を過去のものと認識しがちであり、生活再建が順調ではない他者に対しては自己責任と捉えやすい傾向がみられた。他方、解決されないままの不満や不信感が長期間にわたって持続している側面があることも確認されるなど、生活再建への認識に関する類型化をおこなうことができた。
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