研究課題/領域番号 |
17K04152
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
原田 謙 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (40405999)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域環境 / 居住満足度 / 高齢者 / 健康 / ソーシャル・キャピタル |
研究実績の概要 |
海外では、ソーシャル・キャピタルに対する理論的関心の高まりや(個人が属している地域的な文脈を考慮する)マルチレベル分析の発展に伴い、地域環境と居住満足度の関連に関する実証研究が蓄積されている。さらにAge-friendly cityという政策的観点から、高齢期においても住み続けやすい都市の条件が探求されている。しかし日本における地域環境と居住満足度に関する研究は遅れている。そこで本研究は、都市部における高齢者の居住満足度に関連する要因を、地域環境に着目したマルチレベル分析によって明らかにすることを目的とした。 2017年度は、2018年度に実施する郵送調査にむけて、居住満足度と地域環境に関わる概念的整理を行うとともに、海外の先行研究で用いられている測定尺度をレビューした。居住満足度については、地域への愛着や永住意思に加えて、コミュニティ感覚の尺度も含めて検討した。地域環境については、集合的効力感をはじめとするソーシャル・キャピタル関連の尺度、商店・運動施設・公共交通機関へのアクセス、地域の荒廃度に関する尺度を中心に検討した。 地域環境に着目した居住満足度の関連要因の分析は、米国の環境心理学を中心に展開されていた。レビューの結果、こうした心理学的な分析枠組みと、日本でも公衆衛生学を中心に蓄積されている「健康の社会的決定要因」にかかわるマルチレベル分析の枠組みをどのように融合するかが、本研究における分析枠組みの課題であることがわかった。 本年度は、上記の作業と並行して、心理学および公衆衛生学の連携研究者とともに、調査票の作成をすすめた。具体的な調査項目は、地域集団/ボランティアへの参加状況、(上述の)居住満足度と地域環境の評価、社会的ネットワーク(友人関係など)、身体的・精神的健康度、生活習慣(飲酒、喫煙、食習慣)、身体活動(運動/歩行時間)、本人の社会経済的地位などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、都内居住の55~84歳の男女を対象とした郵送調査の実査にむけて、おおむね順調に進んでいる。すでに先行研究のレビューおよび調査票の検討も進めており、計画通り実査が可能な状況である。調査の標本抽出と発送作業については調査会社に委託する予定であり、その仕様についても詳細を詰めている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
郵送調査のサンプル・サイズは、申請時には2,000人で計画していた。実査のサンプル・サイズは、2018年度に配分される研究経費に基づき、実施可能な最大人数を最終的に決定する。これに伴う、分析計画等の変更はない。 郵送調査は、2018年度内に終了し、回収した調査票の点検、データ入力作業も完了する予定である。その後、分析に着手し、調査協力者に結果をフィードバックするパンフレットの作成、学会報告の準備等を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は、人件費・謝金が発生しなかったため。未使用額は、2018年度の郵送調査費用に充てる。
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