日本社会の葬送儀礼の縮小化や簡素化は共同体的社会関係が大きく変質したことによる。つまり葬儀からの地域共同体の撤退、職場共同体・親族の撤退という段階を経て、家族の撤退という段階へと進行しつつある。本研究は、葬儀の変質を日本、ベトナム、フランス各国での聞き取り調査、観察調査によって明らかにしてきた。 2021年度はCOVID-19のために海外調査ができなかったが、オンライン参加で国際ワークショップならびに日本社会学会大会での研究報告、英語論文の執筆を行った。 2021年11月にはベトナム社会科学院・社会学研究所が主催する国際ワークショップCOVID-19 and Social ChangeでPatterns of end-of-life ceremonies under the COVID-19 in Japanと題して口頭報告を行った。コロナ禍に実施された葬送儀礼から3つのケースを題材にして、儀式の自粛、ソーシャルディスタンス、規模の縮小、会食の禁止など通常の葬送儀礼とは大きく変化したことを紹介し、今後の日本の葬儀をさらに変質させるであろうことを主張した。 同月には日本社会学会年次大会において「姉家督による家系の継承と幸福感」という研究報告を行った。葬送儀礼の中核をなす「家」が少子高齢化のもとで存続の危機に陥っており、男子直系家族に加えて婿取り婚による直系家族の維持について論じた。 上記の報告をもとに、The Senshu Social Well-being Review誌にAttitudes toward Ie Succession in Contemporary Japan: An Analysis of the SoWIA Surveyを執筆した。祖先崇拝をになう直系家族が、近代以降にどのように変質し、現代家族に変質しているかを婿取り婚の見地から海外向けに紹介した。
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