本研究は、2009~2013年に実施した全国家族パネル調査のデータ分析をすすめるものであった。夫婦関係、さらには親子関係、きょうだい関係などの定位家族内の家族関係についてもパネルデータから実証できることを明らかにすることを目指していたが、まずは情報が豊富な夫婦関係のみをとりあげて分析をすすめることになった。定位家族関係は主たる情報がt1とt2の2時点のみで収集されているのに対し、夫婦関係については観測した5時点すべてで情報が得られていたからである。 中年期の夫婦関係は一般には安定しているものと思われており、また、本研究で使用したパネルデータは全国代表標本でt1では面接で調査されているゆえ、さらに安定した夫婦関係であることが予想された。しかしながら本研究では、夫と妻それぞれからみた夫婦関係の具体的な変動を観測することができた。その変動がどのように起こっているかを、同じ関心をもつ研究者らとともに分析し、その成果をまとめた編著を出版することができた。 今年度は、出版した成果本を家族関係ないしはパネル研究に関心がある研究者らに送付し、多様なフィードバックを得た。夫婦関係の変化については、まずは満足度等、他のパネル調査結果とも一致する変化を確認し、縦断的な手法による成果を明らかにすることができた。さらに、家事分担の夫婦関係への効果や中高年期の人生移行との関連など、多様な成果も得られた。一方で、本研究で用いたデータセットが小規模で観測期間が5年間と短いことから、より頑健な成果を得るためには今後の研究展開が求められる。 研究成果にとどまらず、編著を通じて、パネル分析技法についてひろく研究者間で共有することに貢献できたと考えている。
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