近年、経済のグローバル化の進展、産業構造の転換、新自由主義社会の深化にともない、非正規や間接雇用、単純労働、ワーキングプア等、既存の法制度や労使関係システムでは十分に包摂されていない労働が世界的に増大している。こうした労働は、「不安定就労」(precarious work)と概念化され、その増加が格差の拡大、貧困層の増大に直結している。 こうした状況に対し、米国では当事者組織であるワーカーセンターや労働組合、労働NGO、大学が地域で連携組織を構築し、市・州単位での戦略的キャンペーンを成功させている。 しかしながら、日本ではこうした連携組織は存在していない。そこで本研究の目的を、不安定就労に従事する労働者による直接的な処遇改善を目指す連携組織の、①米国での成立要因の解明、②日本における構築可能性の検証、とした。 その結果、まず①米国での成立要因の解明について、最低賃金引き上げに成功したサンフランシスコ市、オークランド市、またロサンゼルス市等では、いずれも地域の連携組織による戦略的キャンペーンを行っていたことを解明した。連携組織の構成は①:低賃金労働者によるコミュニティ組織(例:ワーカーセンター)を中心とし、②シンク・アンド・アクト・タンク:調査研究や①の権利擁護を行うとともに、①と③を繋ぎ、連携全体をコーディネートする、③:労働組合等から成る運営委員会が形成され、それを④大学のレイバーセンターが教育・研究面で支援し、労働者に親和的な経営者・教会や社会運動が支持していたことを明らかにした。 次に②日本における構築可能性の検証について、連携組織を構築する上で必須の資源と考えられる、リーダーシップや公正な組織づくりに関する米国の参加型労働教育手法を収集し、教育プログラムを開発するとともに複数回実践した。
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