研究課題/領域番号 |
17K04163
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
首藤 若菜 立教大学, 経済学部, 教授 (30323158)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 労使関係 / グローバル化 / 労働組合 / 労働規制 / 国際労使関係 / 従業員代表委員会 / 国際労働運動 / 国際連帯 |
研究実績の概要 |
本研究は、多国籍企業に対するグローバルな労働規制の実情を明らかにし、グローバル化に対応した労使関係のあり方を検討することにある。 企業のグローバル化に比べて、労働組合のグローバル化は遅れている。企業は、海外への直接投資を増やし、在外事業所で多数の従業員を雇用し、幅広く事業を展開している。対して、労働組合は一国内で労働者を組織し、活動をおこなっている。労働組合の国際連帯の遅れが、労使の対等性を揺るがし、組合の弱化をもたらしている。この問題意識から、本研究では多国籍企業の本社を組織する労働組合が、海外工場の労組と連携を築き、在外事業所の組織化、労働教育、雇用と労働条件の向上などに関わっている事例を調べ、それをもとにグローバルな労使関係の道筋を検討するものである。複数の多国籍企業を対象に、本社と在外事業所の労使双方にヒアリング調査をおこない、関連する資料を収集し、グローバルな労使関係の形成過程、国際的な職場規制力の有無を解明する。 2019年度は、日系小売業の多国籍企業労組が、在外事業所の労組と意見交換、情報共有を目的に、年1回のペースで国際会議を開催している事例に着目し、その議事録を読み、関係者のインタビューをおこなった。 研究成果の一部は、論文にまとめた。論文では、日系小売業のケースを詳述し、そのうえで国際的労使関係を構築するうえでの課題を論じた。例えば、本社の労組と海外事業所の労働者とは、経済水準、労働法の整備状況などが大きく異なるため、そのなかで労組同士が国際連帯するには適切な共通テーマを設定することが肝要である。これまでの調査によれば、安全衛生は比較的議論しやすいのに対して、賃金をテーマとした場合には国際的な連帯が難しくなったケースさえあった。それらのケーススタディをもとに、国際連帯のあり方を段階に分けて論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響により、2019年度の春休み中(2020年3月)に実施予定であった海外調査の実施が困難となったためである。現在のところ、同調査の2020年度の実施の目途は立っていない。 調査先として予定していたベトナムでは、調査協力者である現地の研究者と連絡を取り合い、関係資料の共有し、研究を進めている。だが当初予定していた内容の研究調査ができているわけではない。 また国内調査も、2020年3月に予定していたJAM(ものづくり労働組合)などへのヒアリング調査が延期したままの状態となっており、この先の見通しも現時点でたっていない。 現在は、これまで集めてきた資料を読み、論点を整理するとともに、論文の執筆準備をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、春休みに予定していた研究調査が、新型コロナウイルスの影響で中止となったため、2020年度は、必要に応じてベトナム、タイの労働組合の活動実態の追加調査をおこなう。 ただし、感染症の流行状況を考えると、2020年度の実施も難しい可能性がある。海外調査が難しい場合には、国内調査に切り替え、可能な限り資料収集、関係者のヒアリングをおこなう。具体的には、2019年度に調査を実施した日系小売業の多国籍企業労組と人事担当者、ベトナムに工場を有する日系製造業の多国籍企業労組と人事担当者である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、春休みに予定していた研究調査が、新型コロナウイルスの影響で中止となったため、調査費用として計上していた旅費の経費を使用しなかった。 2020年度に再び海外調査を計画し、実施する予定である。ただし感染症流行の収束がみられなければ、海外調査を国内調査に切り替えて、研究を遂行する計画である。
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