研究課題/領域番号 |
17K04163
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
首藤 若菜 立教大学, 経済学部, 教授 (30323158)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グローバル枠組み協定 / 多国籍企業 / グローバル化 / グローバルサプライチェーン / 国際労働基準 / ILO |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多国籍企業に対するグローバルな労働規制の実情を明らかにし、グローバル化に対応した労使関係のあり方を検討することにある。 2021年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、前年度に引き続き海外への実態調査は困難だった。そのため、先行研究の収取と整理、国内の実態調査を重点的におこなった。 グローバル化と労使関係をめぐっては、2000年代以降、GFA(グローバル枠組み協定)が注目を集めてきた。グローバルサプライチェーンにおいて、ILOが定義する中核的労働基準が遵守されていない実態が、国際NGOを通じてたびたび告発され、労働組合は国境を越えた規制を強化しようと、多国籍企業とグローバルユニオンとの間で協定を締結するようになった。それがGFAである。2021年度は、GFAを用いた労使紛争の解決や支援の事例を先行研究を通じて収集し、整理した。 なお、2021年の夏には、1年の延期を経て、東京オリンピックパラリンピックが開催された。こうした国際的で大規模なイベントの際には、国際的な労働組織により、主催国に本社を置く企業に社会的責任を求める動きが起こる。例えば、ILOは、東京オリンピックパラリンピック開催にむけて『国際労働基準と持続可能性に配慮した調達ハンドブック』を刊行し、サプライチェーンマネジメントにおける労働者の権利保障を訴えた。 こうした動向を背景に、日本に本社を置く多国籍企業でのGFA締結に期待が寄せられていたため、多国籍企業の本社の労働組合にヒアリング調査をおこなった。GFA締結事例はなかったが、労使協議のなかでGFAに関わる議論の有無と内容をヒアリング調査した。GFAの締結および運用には、多国籍企業の本社の労働組合の関与が必須であることが分かった。現在、調査結果を整理し、分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、海外調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルスの影響により実施が困難となっている。 そのため、国内調査を中心にしながらも研究をさらに発展させるため、2020年度に研究計画を大幅に見直した。 グローバル化と労使関係に関しては、GFAに分析対象を絞り込み、同時に、新型コロナウイルスの感染拡大が雇用に及ぼす影響についても焦点をあて、その観点から国際的な労使関係の実情を明らかにしようと研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響で海外調査の実施が難しいことから、2022年度も引き続き国内でのヒアリング調査および文献調査を実施する。 GFAの効果を検証するために、労働組合が発行する機関誌、ニュースなどをもとに事例を収集する。同時に、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の縮小が雇用に大きな影響を及ぼしている業種に焦点を当てて、労働組合の機能に関する研究も進める。とくにパンデミックの影響をみるために、従来対象としてきた自動車産業・小売業に加えて、航空産業も研究対象に加える。これらの実態調査に基づき、国際的な労使関係の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、海外調査が実施困難となっているため、旅費を支出する必要がなくなった。その分、今年度も実施を予定している国内でのヒアリング調査のテープおこし代金、図書費に充てる。
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