研究課題/領域番号 |
17K04170
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
阿部 利洋 大谷大学, 文学部, 教授 (90410969)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フットボール / 移民 / 東南アジア |
研究実績の概要 |
本研究は、近年急速に発展をとげる東南アジアの新興フットボール市場を対象に、そこにおける外国人選手の役割やネットワークに考察を加えることを目的としている。従来、フットボール移民選手を対象とした社会学的研究では、ヨーロッパ市場におけるアフリカ人選手を対象とし、移民の送り出し国と受け入れ国の経済格差とそれに起因する移民選手の否定的環境を批判的に検討するものが多かった。たとえば、グローバルなサッカー・ビジネスにおける南北格差の中で、10代の無名のアフリカ人選手は「生」の状態でヨーロッパのサッカー・アカデミーへ「輸出」され、そこでトレーニングを受け(「加工」され)、一握りのスター選手(「完成品」)は巨額の移籍金とともに「売却」されるが、その段階に至らなかった多くの無名選手は「廃棄」される、といった認識の図式が該当する。 それに対して、本研究は、東南アジアという新興市場を取り上げる点、また、移民選手の能動的なサバイバル戦略と独特のネットワーク構築に焦点をあてようと試みる点で、先行研究とは異なる知見を模索している。 上記の視点にもとづき、今年度はカンボジアとタイで現地調査を行い、主としてアフリカ人選手らから聞き取りを行った。チーム内での他の移民選手とのポジション争い、マジョリティであるカンボジア人/タイ人チームメイトとの関係構築、予期せざるケガの対処、さらには移籍をめぐる交渉などに焦点をあてた。タイでは、外国人選手のリクルート先の「トレンド」が変化していること、カンボジアではクラブ運営その他に日本人専門家の働きかけが顕著であることがうかがえる。こうした就労環境の変化のなかで、アフリカ人選手がどのように各リーグ・市場を認識し、またどのように対応しているか、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンボジアリーグにおけるアフリカ人選手の現地適応を主要な論点とした論考が、当初の予定より早く公刊されている。
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今後の研究の推進方策 |
東南アジアの国内リーグにおいてプレゼンスを増している日本人アクターに関して、選手のみならずクラブ運営サイドやその他の関係者も含めて、その戦略や活動について聞き取りを進める必要がある。そうした情報を踏まえたローカルのコンテクスト理解が次の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
関連書籍購入費に充てる予定であったが、残額が少ないために不可となった。この分は、次年度の文房具等消耗品費に充てる予定である。
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