研究課題/領域番号 |
17K04171
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鄭 雅英 立命館大学, 経営学部, 教授 (90434703)
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研究分担者 |
林 梅 大阪経済法科大学, 社会学部, 研究員 (20626486)
高 誠晩 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (40755469) [辞退]
玄 善允 大阪経済法科大学, アジア研究所, 教授 (80388636)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 移民 / ナショナルな帰属意識 / 中国朝鮮族 / 済州島出身者 / 在日朝鮮人 |
研究実績の概要 |
本研究は中国朝鮮族と済州島出身の在日朝鮮人を事例に、①移民の「ネーション」意識形成過程における国民国家の作用②自己を包摂・排除しようとする国民国家に対する移民の対抗戦略を明らかにすることを目指した。研究組織は研究代表と研究分担者2名で構成され、中国延辺朝鮮族自治州、韓国済州島、日本国内の済州島出身者集住地における現地調査を中心に、インタビュー調査と資料調査を並行させつつ、合同の研究会やシンポジウムの場で研究内容を共有・公開した。 最終年度(2019年度)、研究代表者鄭雅英は中国朝鮮族の国家帰属意識の岐点とも言える1949年吉林省民族工作座談会における延辺帰属をめぐる議論(中国の少数民族自治地域とするか朝鮮民主主義人民共和国領とするか)に焦点を絞り、この議論が中国朝鮮族のナショナルな帰属意識と民族主義的心情の最も先鋭的な交錯を示していることを明らかにし、一種の妥協点として「少数民族区域自治」をとりあえず選択したと考えた。研究分担者玄善允は済州島の地方新聞に掲載される「祝意広告」や高校同窓会活動の分析と現地フィールドワークを通じて、「クェンダン」に象徴される済州島固有の濃厚な人的ネットワークの機能と、すでにそのネットワークから離脱しつつある在日済州島出身者社会における「二重の辺境性」を明らかにしている。研究分担者の林梅は、中国朝鮮族農村における葬礼に関する現地調査により,均質的な国民を前提とした国家政策と伝統的文化の齟齬・軋轢を乗り越えるために、移民は自己の民族的側面としての生活慣習や国民的側面としての政治政策を生活環境を構成する一要素として利用しつつ、対抗的な生存戦略を常に探っている状況を明らかにしている。 本研究を通じ、移民集団は国民国家と民族意識の狭間で独自の地縁血縁ネットワークを構成し、外的社会と折り合いをつけつつ生活世界を構成している実態の一端を明らかにした。
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