2022年度は、新型コロナウィルス感染症の影響によって、主な調査地である東京都内での調査が引き続き十分に行えない状況が続いた。感染症の拡大に加え、コミュニティのリーダー層においても失職者の増加などによって調査対象者が十分に時間をとれない環境が発生したことも影響した。 本来は、ミャンマー少数民族の自助組織の取り組みを参与観察するとともに、各少数民族グループのリーダーにヒアリングを実施し、日本社会との関係構築、民族間の協働等について明らかにする予定であった。参与観察の現場としてミャンマー難民、コミュニティの成人に向けた日本語教室と、ミャンマー難民、コミュニティの子どもに向けた母語教室を想定していた(ともに東京都新宿区)。参与観察、現地でのヒアリングは困難となったが、2021年のミャンマーにおけるクーデター以降、在日ミャンマーコミュニティの本国支援に関して、引き続きオンラインによるミーティングに参加し、コミュニティ内の状況や、日本社会との関わりについて、民族間だけでなく世代間、在留資格間で大きく異なりのあることが分かった。 具体的には、就労や留学で日本に暮らす若い世代は、日本語運用能力が高く、ミャンマーへの支援に対して積極的に日本社会と交渉し、活動に持続的な協力を得ることに成功していた。とりわけ技能実習や教育機関における奨学金など日本社会の抱える制度的課題を指摘した取り組みは、多くの関係者を巻き込んだ。一方、民族間における日本社会との関わりの差異に関しては、クーデターに対する各民族の支援活動が長期化する中、差異の拡大を確認した。 在日ミャンマーコミュニティの状況について、特に世代間の差異に焦点化し、国際ボランティア学会と総合地球環境学研究所が共催した連続シンポジウム「共話シリーズ」において発表を行うとともに、国際ボランティア学会誌『ボランティア学研究』に投稿した。
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