研究課題/領域番号 |
17K04177
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
林 怡蓉 大阪経済大学, 情報社会学部, 准教授 (10460990)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人々の声 / 社会的コミュニケーション / テレビの規範概念の実践 / 多様性/一元性 / メディアの規範理論 / 政治理論 / デリベラティヴ・デモクラシー論 / 反省性 |
研究実績の概要 |
(1)-②日本で行ったビデオリサーチについて,2018年度は日本のテレビ番組(情報系,ニュース系番組)の収集とデータ分析を行った.しかし,研究助成申請当時にわずかながらあったソーシャルメディア参加型テレビ情報系,ニュース系番組がなくなった.初歩段階の分析では,番組によって描かれる社会的リアリティ--テレビ・リアリティ--の話題,内容の一元・一面性が目立った. (2)と関連するソーシャルメディアの基礎調査分析からでは,ソーシャルメディアの特性--とりわけ自らの関心と密接した形での情報接触--によって,閉鎖的な情報環境を自ら作り上げている状況(齋藤純一 2008,キャス・サスティーン 2001=2003,2017=2018)は日本においても確認できた.利用者はインターネット,ソーシャルメディアで得られた情報(フェイクニュース)に対して無批判的に信じ込み,それをもとにコミュニケーションを行い,場合によって実社会で行動に移すケースさえあった. (3)国際比較とメディアの規範理論の再検討:台灣でのメディア調査に関しては,テレビ番組,新聞,ソーシャルメディアでやりとりされるフェイクニュースについて,ファクトチェックを行う民間組織が複数設立された(台湾事実査核中心=Taiwan FactCheck Center・ほか).これらの組織がLINEと協力し,フェイクニュースをチェックする取り組みを2019年に正式に開始する予定である.イギリスとアメリカについてはメディアを媒介にした社会的コミュニケーションに関する基礎状況を調べ,調査のベースを整えつつある.また,メディア規範理論の再検討では,「反省性」(reflexivity/ reflection)という概念が理論の再構築する際の導入可能性について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学務,教務量が予定より多くなり,ビデオリサーチ結果の分析においてやや遅れている.また,大幅な円安のため,計画で予定していた現地でのパイロット調査の実施を取り止め,基礎データ資料の分析に置き換えた.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は以下のように進める予定である. (1)日本の放送制度と放送における社会的コミュニケーション空間の実践と課題についての研究計画は昨年度でのビデオリサーチ分析結果を踏まえつつ,今年度においてもビデオリサーチを実施する.分析する際には昨年度同様の分析枠組みを用いて,変化がないか,あるとすればどのような変化かに着目し,必要に応じて分析枠組みの修正を図る.台湾も継続調査を行う. (2)林(代表)が構築したメディアを媒介にした社会的コミュニケーションの分析批判枠組みを用いてインターネット言論空間の分析について,2018年度の調査研究はインターネット,ソーシャルメディアが媒介する社会的コミュニケーション課題の指摘になる事例が目立ったが,2019年度では,プラスに働く事例も見出し,その間の差に着目して分析を行う予定である.この調査を通してメディアの規範理論の再構築に考慮しなければならない条件を再度確認できると考える. (3)イギリスでの調査を行い,アメリカでの調査準備をする.2018年度に研究協力者の魏キン氏のほか,イギリス現地情報に詳しい協力者が得られた.そして,アメリカでのソーシャルメディアを媒介にしたコミュニケーション状況と分析に詳しい現地研究者との研究協力の検討を進める. これらの調査を遂行しつつ,メディアの規範理論の再検討に繋がる研究を継続する.
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次年度使用額が生じた理由 |
円安状況のなか,次年度(2019年度)に実施するイギリス調査のために無駄を省きつつ,科研費以外の学内資金を獲得し,調査研究および国際学会での学会発表を遂行した.
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