研究課題/領域番号 |
17K04177
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
林 怡蓉 大阪経済大学, 情報社会学部, 准教授 (10460990)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人々の声 / 社会的コミュニケーション / テレビの規範概念の実践 / 多様性/一元性 / メディアの規範理論 / 政治理論 / デリベラティヴ・デモクラシー論 / 反省性 |
研究実績の概要 |
1.日本での研究調査実績 (1)ビデオリサーチの中間結果:ビデオリサーチは2019年7月3日~21日という参議院議員選挙を控える時期に行った.しかし,昨年に行ったビデオリサーチの方向性と類似している. (2)事例研究:萩生田文科相による「身の丈」発言問題を取り上げた.2019年10月24日にBSフジ「プライムニュース」という討論,インタビューを主とする番組で萩生田は2020年大学入試改革をめぐり,英語民間試験の活用の際の不公平問題について司会に問われ,「自分の身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と発言したことが発端であった.この事例について「インターネット,ソーシャルメディア/テレビ/新聞」の情報の流れについて分析を行い,そこで人々の声の量とともに発言内容に加えメディアでの扱われ方に着目した.結果,話題はソーシャルメディアから始まり(2019年10月24日深夜・0時13分),テレビ,新聞と報道されるようになった.また,テレビと新聞の報道量に各社間で開きがあったことも明らかとなった. 2.台湾に関する研究調査の実績 研究代表者がすでに『台湾社会における放送制度』(2013)で明らかにしたように台湾は放送を中心としたメディアを媒介に政治課題のみならず,政治なるものをめぐる様々な声が他者へと伝わる,いわゆる多声社会の様相を呈している.今年度の台湾調査は台湾社会の選挙におけるメディア存在の重要性について再確認できた.しかし,インタビューした多くの集会参加者は,今回の選挙はこれまでになく「混乱している」ことを口にした.この「混乱」といわれる背景には,フェイクニュースの(選挙利用に関わる)問題,ソーシャルメディアを媒介にした社会的コミュニケーションの課題(情報,議論の閉鎖性による「同温層」の形成と政党による意図的利用),テレビ番組の視聴環境及び視聴習慣の変化がみられたことを背景としている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
日本での調査は順調に進んでおり,現段階までの調査分析で得られた知見についての論文執筆を開始している.また,2020年1月10日~13日に行った台湾調査に関しては,現地で「選挙とメディア」をめぐる状況,文献収集を行うことができた.しかし,3月に行う予定であったアメリカ,イギリス調査は1月の時点で新型コロナウィルスの流行状況を鑑みて実地調査は断念せざるをえなかったため,進捗状況は当初の計画と比べ遅れている.しかし,代わりに次回調査を行う際の資料や調査先に関する情報収集に努めた.
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今後の研究の推進方策 |
なんと言っても海外調査が難しくなっている昨今の新型コロナウィルスの流行状況下で,アメリカ,イギリスまた台湾での実地調査の可能性を探る.入出国の許可状況や所属大学の方針を鑑みて安全性が確認できれば,2020年度の8月もしくは9月に台湾の継続調査を行いたい.そして,現在の進捗状況で述べたように,日本の調査研究は順調に進んでおり,(とりわけ欧米での)海外調査が厳しい状況のなか,少なくとも,これまで日本と台湾研究で得られた知見をまずは体系的にまとめる作業を行う.そして,日本の経年調査及びデリベラティヴ・デモクラシー論を含む批判的社会理論と政治思想論の継続研究をする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行状況よりアメリカ及びイギリスでの調査を断念せざるを得なかったためである.
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