研究課題/領域番号 |
17K04177
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
林 怡蓉 大阪経済大学, 情報社会学部, 准教授 (10460990)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メディアの規範理論 / 社会的コミュニケーション / メディアの媒介 / 感情,情動の政治哲学 / 感情,情動の社会学 / メディアにおける感情の表出 |
研究実績の概要 |
1.日本に関する研究調査実績:経年のビデオリサーチからでは,コロナ禍後,午前中の情報系番組がTwitter,LINEを利用した視聴者意見を収集し,番組内の質問コーナーや討論時に組み込むことがみられた.しかし,どの意見をどのような意図で取り上げるかについては現時点不透明である.事例研究として,検察庁法の改正案,日本学術会議委員任命問題を事例として取り上げ,2019年度の「身の丈発言問題」と同様に,「インターネット,ソーシャルメディア/テレビ/新聞」の情報の流れについて分析を行い,そこで人々の声の量とともに発言内容に加えメディアでの扱い方に着目した.「パーソナル・マスコミュニケーション」な情報の流れが広く社会的コミュニケーションにつながる議論展開となっていることが確認できた. 2.台湾に関する研究調査の実績:台湾はこれまで放送を中心としたメディアを媒介に政治なるものを含む様々な話題,課題をめぐり,多様な声が他者へと伝わる情報の流れが基本であった.日本でも話題となった台湾の「マスクアプリ」の開発背景のように,社会的不満,不安を示す具体的な事案が連日テレビ,新聞,ソーシャルメディアで多く語られ,みられ,聞かれていたことによるところが大きいと思われる.すなわち,これまで得た知見と同様に,人々意見の表明がメディアを媒介にして共有され,他者の現前に「現われ」となることが重要な条件となっているといえる.また,世代間に違いはあるか.あるとすればどのような違いがあるか.これらについて引き続きメディアの利用環境及び習慣の変化について調査を継続する必要がある. 3.社会的コミュニケーションに資するメディアの規範理論研究:「感情」,「情動」をめぐる社会学ならびに政治学,政治哲学に関する先行研究を今日的な社会問題,グローバル的に広がる社会課題の解決につながる重要な視角を得た.引き続き継続研究を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
日本での調査は順調に進んでおり,これまでの研究成果と現段階までの調査分析で得られた知見に加え,2021年度の6月末までに継続するビデオリサーチの研究成果を併せて今後,著書として仕上げる準備をしている.また,新型コロナウィルスの流行状況が悪化するなか,本研究代表者が外国籍であり,日本への再入国条件が日々激しく変化していたため,2020年度は台湾及びアメリカ,イギリスでの実地調査は断念せざるをえなかった.その部分に関する研究の進捗状況は当初の計画と比べ遅れている.しかし,台湾に関しては多くの衛星放送の24時間ニュース専門チャンネルがYouTubeで同時放送を行うようになってきて,継続的なビデオリサーチは厳しいが,英米も含めて次回実地調査を行う際の資料,文献や調査先に関する情報収集に努めた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進の方向としては,(1)コロナ禍が落ち着き,日本への再入国に妨げとなる状態が緩和され,また所属大学の方針を踏まえ,調査に伴う問題がクリアされ,安全性が確認できれば,本研究は可能な限り英米,台湾での実地調査を行いたいと考えている.(2)そして,「分断」社会と語られる今日の時代に感情,情動の社会学,政治学,政治哲学と,人々が社会を知り,情報を手に入れ,身につける「当たり前」を構築するメディアに関する規範理論の結合をこれまでの調査研究でえた知見を踏まえて行う.この作業によって本研究が対象としている諸社会が抱えている問題,さらにいえば,情報知の分断が激しいインターネット時代だからこその社会的コミュニケーションに資するメディア規範理論の構築が成功すると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍により,予定していた海外調査ができなかったため,2021年度で実施する際に使用する.
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