2019年7月の参院選直後と2020年1月にオンラインパネル調査を実施し、特に2016年米国大統領選挙以降世界的に注目度が高い問題である「フェイクニュース」の認知に焦点を当てて、ソーシャルメディア利用とフィルターバブルの関連を分析した。 フェイクニュース先行研究のほとんどではフェイクニュースを虚偽の情報と定義し、人々がなぜ騙されるかを分析しているが、この分析枠組みでは米国のトランプ支持者のようにリベラルなニュースメディアの報道を「フェイクニュース」とラベルを貼るような現象は扱えない。本研究では人々が虚偽・事実を問わずなぜ特定のニュース情報を虚偽と認知するかをリサーチクエスチョンとした。この分析枠組みを採用することで、人々を虚偽情報に踊らされる存在として見るだけではなく、自分の政治的先有傾向と不整合なニュースメディア・ニュース報道を虚偽と認知する傾向も包括的に分析することが可能となる。実際、本研究の分析結果では「フェイクニュース」と認識する情報の情報源として、過半数の回答者が巷間で言われるソーシャルメディアではなくテレビと回答していることなど、先行研究とは大きく異なる知見が得られている。 同分析枠組みにもとづく研究成果は、学術書(「日本の有権者はいかにニュースをフェイクと認識したか」清原聖子(編著)『フェイクニュースに震撼する民主主義』大学教育出版)、ならびに国際学会発表(ITS Bangkok 2019、2019 KAPS)にて発表している。
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