最終年度である2020年度は、これまで積み重ねてきた調査から得られたデータへの分析と、また、前年度までに行ってきた学会・研究会等での議論から得られた示唆を元にした、研究成果の論文化と公表に注力してきた。特に医療社会学を――中でも難病当事者の研究を――専門とする研究者によって構成される研究会で報告を行ったことにより、重要な示唆を多数得ることができた。 こうした形で研究を進めてきた結果、現在学会誌に投稿を予定している論文1本を執筆することができた。本論文は、これから投稿と査読を経ることとなっているものではあるが、掲載され公表された場合には、医療技術に対する当事者の意味付与実践の実態を明らかにすることが可能となる研究であると考えられ、その点で医療社会学に新たな知見を提供するものとなると思われる。 なお本来であれば、最終年度においても調査を積み重ね、分析のさらなるブラッシュアップと研究期間終了後のさらなる研究の展開へとつなげたいという思いもあったが、コロナ禍であることと、本研究がHTLV-1関連疾患を既に発症している人々や、HTLV-1に感染している人々を対象としている以上、不用意に調査を行うことで対象者を危険にさらすことはできないと考え、実際に現地でインタビュー調査を行えたのは1回のみであり、それ以外はオンラインでの調査に留まった。その点において、当初予定していた研究計画から若干の変更が生じることとなっている。
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